フリーストールTMR給与時における乳中尿素態窒素と乳蛋白質率の指標値
- [要約]
- フリーストールTMR給与時における乳中尿素態窒素(MUN)値は、粗蛋白質含量 (CP%)、可消化養分総量含量(TDN%)、TDN/CP比、分娩後日数、乳量、産次の影響を受け変動し、乳蛋白質率と合わせて給与飼料の栄養評価に利用できる。
兵庫県立淡路農業技術センター・畜産部
[連絡先]0799-42-4883
[部会名]畜産
[専 門]動物栄養
[対 象]乳用牛
[分 類]普及
-
[背景・ねらい]
- 乳中尿素態窒素(MUN)値と乳蛋白質率はルーメン内の蛋白質とエネルギーの相対関係を反映して変動し、これらのバランスを指標とした給与飼料の栄養評価が注目されている。しかし、MUN値は地域・飼養形態・泌乳期等によって変動するとされており、より高度な活用にはこれらの条件を加味した指標値が必要である。そこで、実態調査に基づき、本県のフリーストールTMR給与時における指標値を策定する。
[成果の内容・特徴]
- フリーストール牛舎でTMR給与の酪農家7戸、述べ1,366頭の乳汁と16検体のバルク乳を採取し、血液自動分析装置でMUN値を測定する。併せて、給与飼料中の養分含量・乳量・分娩日・産次についても調査する。
- 各個体のMUN値と乳蛋白質率に影響する要因を重回帰分析によって検討する。その結果、粗蛋白質含量(CP%)、可消化養分総量含量(TDN%)、TDN/CP比、分娩後日数、乳量、産次が有意な要因となる(表1)。
- TMRの養分含量が適正範囲内(CP%:15〜18%、TDN%:67〜75、TDN/CP比:3.9〜4.8)である1,067頭を選抜し、MUN並びに乳蛋白質率の平均値±標準偏差を指標値とする。その結果、MUN並びに乳蛋白質率の指標値は泌乳初期13.86±2.89(10.97〜16.75)mg/dl、3.02±0.27(2.75〜3.29)%、中期15.64±2.95(12.69〜18.59)mg/dl、3.25±0.28(2.97〜3.53)%、後期15.24±2.67(12.57〜17.91)mg/dl、3.56±0.37(3.19〜3.93)%となる(表2)。
- CP%とTDN/CP比に基づくMUN予測式に適正な養分含量を組み込むことで、バルク乳MUNの指標値(10.7〜16.2mg/dl)を策定する(表3)。
[成果の活用面・留意点]
個体乳MUN値は、牛群検定実施時等の機会を利用し、基準値を参考にして栄養評価を行う。バルク乳MUN値は、日常的なモニタリングに利用する。バルク乳測定値が指標値を逸脱する場合、飼料中の養分バランスを点検する必要がある。
[その他]
研究課題名:飼料給与改善のための乳中尿素態窒素指標値の策定
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(平成10〜12年)
研究担当者:篠倉和己、生田健太郎、小鴨 睦
発表論文等:兵庫県下の酪農家における乳中尿素態窒素の実態と予測値、兵庫県農業技術センター研究報告(畜産)第37号(投稿中).
兵庫県内の酪農家における乳中尿素態窒素の実態と基準値、日本畜産学会第97回大会講演要旨、10、2000.
目次へ戻る