無希釈尿汚水の曝気処理技術


[要約]
乳用牛尿汚水を無希釈で曝気処理する場合、前処理で汚水中のSSを固液分離機で物理的にできるだけ除去することとBOD容積負荷量を0.25kg/m3 ・日とすることで、腐植質資材の有無にかかわらず、BOD、SSの除去された無臭で汚物感のない処理水が得られる。
滋賀県農業総合センター畜産技術振興センター・バイテク環境担当
[連絡先]0748-52-1221
[部会名]畜産
[専  門]環境保全
[対  象]乳用牛
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 最近、尿汚水を無希釈で、ある種の腐植質資材を用いて曝気処理を行い浄化する手法が各地で行われ、本県でも実績をあげている事例がある。しかし、失敗例も見受けられ普遍的技術として平準化することが求められている。
 そこで、実用規模の施設を作製し、この技術の大きな特徴である腐植質資材使用の有無による稼働状況を調査し、その必要性について検討する。
 なお、この腐植質資材は、汚水浄化の中心的な働きをする微生物を誘導する作用があるとされている。

[成果の内容・特徴]

  1. 運転条件は搾乳牛15頭規模でBOD容積負荷量0.25kg/m3 ・日、BOD-MLSS負荷量0.09kg/kg・日とし、無希釈の汚水を投入することである(図1)。
  2. 固液分離機によるSS除去率は平均47%で除去効果が高い。(図2)。
  3. 沈澱槽内上部から発生するアンモニアは両区とも運転開始後80日前後で未検出となり、無臭となる(図3)。
  4. 両区ともBOD除去率は99%以上と極めて高く、SSも除去率はやや低いものの、前処理での除去とあわせると高い除去率となり、汚物感がなくなる(表1)。
  5. 両区ともその他の成分については除去率が低く高濃度で残留する(表1)。
  6. 両区とも1年間の稼働では余剰汚泥の発生はない。

[成果の活用面・留意点]

  1. 腐植質資材は必ずしも必要としない。
  2. 固液分離機によるSS除去は機種により異なるが処理能力の向上、余剰汚泥の削減のためには不可欠である。
  3. BOD、SS以外は放流基準値に達しないため処理水を消毒しても放流できないが、窒素等肥料成分が含まれるため肥料的効果が期待できる。
  4. 毎日一定量生産される処理水の利用方法を考慮しておく必要がある。

[その他]
研究課題名:無希釈尿汚水の曝気処理技術
予算区分  :国補
研究期間  :平成12年度(平成10〜12年)
研究担当者:土井真也、渡辺千春、藤田耕
発表論文等:

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