肥育豚用低リン飼料へのフィターゼ添加によるふん中リン排泄量の低減


[要約]
鉱物性無機リンを含まない低リン飼料に、微生物由来のフィターゼを1000U/kg添加して肥育豚に給与すると、ふん中のリン排泄量が一般飼料に対して最大32%低減するが、有意に厚脂となり格付の低下が認められる。
兵庫県立中央農業技術センター・畜産試験場・家畜部
[連絡先]0790-47-1117
[部会名]畜産                     
[専  門]環境保全
[対  象]豚
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 豚は植物性飼料に含まれる有機リンの利用性が悪いため、市販の配合飼料では鉱物性無機リンを添加してリンの養分要求量を満たしている。しかし、利用率の低い有機リンは大半が未利用のまま排泄されるため、環境汚染の原因となっている。そこで、有機リンを分解しリン利用率の向上によるリン排泄量の低減が期待できる微生物由来のフィターゼを、鉱物性無機リンを添加しない低リン飼料に添加して、その添加水準による肥育豚の発育への影響とふん中へのリン排泄量の低減効果を検討した。

[成果の内容・特徴]
 日本飼養標準に準じた標準区と、標準区から第2リン酸カルシウムを除去し、フィターゼを飼料1kg当たり500U添加した500U区及び1000U添加した1000U区の3区を設け、三元雑種(LWD)去勢豚9頭、雌豚9頭の計18頭を6頭ずつ配置して、体重30kgから110kgまでの発育試験を実施した。また、肥育期を前・中・後期の3期に分け、36頭の去勢豚を各区に4頭ずつ配置してリン出納試験を実施した。
(1)発育試験において、各区とも増体量と飼料要求率に有意差はない(表1)。
(2)発育試験中の血中無機リン濃度は、試験開始時、体重70kg時及び試験終了時のいずれも区間に有意差はなく、500U区及び1000U区は標準区と同等の血中無機リン濃度を維持した(表2)。
(3)供試豚の枝肉成績は、体格測尺値には区間に有意差がなく、発育に異常は認められないが、500U区及び1000U区の背脂肪が有意に厚い(表3)。
(4)ふん中へのリン排泄量は、フィターゼ添加量に応じて有意な減少を示し、標準区に対する最大低減率は前期に500U区で16.9%、1000U区で31.6%である(表4)。

[成果の活用面・留意点]

    フィターゼは、添加量に応じて飼料単価が増加するので、経済性を考慮して使用する。

[その他]
研究課題名:環境負荷軽減型の豚飼養管理システムの確立
予算区分  :県単
研究期間  :平成11年度(平成9~12年)
研究担当者:設楽 修、岩本英治

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