豚ぷん堆肥施用による銅、亜鉛等の土壌への蓄積


[要約]
豚ぷん堆肥の施用量と、飼料作物及び土壌中の銅や亜鉛等の微量ミネラル濃度を検討した。大量の豚ぷん堆肥を連用すると、土壌へリンや亜鉛が蓄積されるため、 亜鉛も土壌分析項目に加えて施用方法等を指導する必要がある。
岡山県総合畜産センター・中小家畜部・養豚科 飼料環境部 草地飼料科・環境衛生科  
[連絡先]0867-27-3321
[部会名]畜産
[専  門]環境保全
[対  象]豚
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 養豚用の配合飼料には、発育等を改善させるため、日本飼養標準の要求量以上に銅や亜鉛が含まれる場合が多い。従って、豚ぷん中にも銅や亜鉛が高濃度に含まれ、豚ぷん堆肥を農地へ還元する過程でこれらの蓄積が危惧されている。しかし堆肥の利用者は、通常土壌の微量ミネラル成分分析までは行わず、経験的に施用量を決めている。農業研究センターは、豚ぷん堆肥2t/10aを隔年で長期間施用した畑の調査を報告しているので、今回は、大量の短期連続施用が土壌中の銅や亜鉛等の濃度に及ぼす影響を検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 場内圃場に試験栽培区として、豚ぷん堆肥を大量区(5t/10a)、標準区(2t/10a)、無施用区(0t/10a)を設定して、エンバクを栽培後同じ試験栽培区でトウモロコシを栽培した。それぞれの播種時に豚ぷん堆肥(表1)を各々施用して、土壌表層部(0〜15cm)の微量ミネラル成分濃度を測定した。
  2. 作物中の Zn 濃度は図1で、Cu、P、K等も日本標準成分表(1995)と同等か少なく、堆肥の施用量と一致しないことから、作物への吸収は土壌中濃度以外の要因も関与すると示唆された。
  3. 豚ぷん堆肥の施用により土壌中Cu・Zn濃度は図2のように推移した。Znは大量施用区で相関を認め、連用により「農用地における土壌中の重金属の蓄積防止に係る管理基準」(昭和59年 環境庁水質保全局長通達)の120ppmに近づくと予測される。
  4. 豚ぷん堆肥の施用により土壌中P・K濃度は図3のように推移した。Pでは大量施用区で相関を認め、蓄積される傾向となった。

[成果の活用面・留意点]

  1. 大量の豚ぷん堆肥を連用すると、ZnやPが土壌へ蓄積されるが、土壌分析を行いながら化学肥料とともに適正量を施用すれば、優れた有機質肥料として活用できる。
  2. 今後は、豚ぷんの処理利用方法として、豚ぷんたい肥や土壌の分析値に基づく指導体制の整備、他の畜ふんと混合した豚ぷんの堆肥化方法等についても検討する必要がある。

[その他]
研究課題名:豚ぷん堆肥中の微量成分の土壌蓄積
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(平成11〜12年)
研究担当者:河原宏一、内田啓一、古川陽一、串田晴彦、原田護、伊藤述史、日野靖興、辻誠之
発表論文等:平成12年度岡山県畜産業績発表、岡山県総合畜産センター研究報告第12号.

目次へ戻る