電極判別による搾乳・牛乳処理汚水の処理システム
- [要約]
- 搾乳・牛乳処理室から排出される汚水は、生物活性阻害作用を有する殺菌剤を含んでいる。そこで電極で殺菌剤を検知し、これを含まない汚水を連動したポンプで分離回収すれば、回分式活性汚泥法で効率的に汚水処理することができる。
京都府畜産研究所・中小家畜部
[連絡先]0773-47-0301
[部会名]畜産
[専 門]環境保全
[対 象]乳用牛
[分 類]研究
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[背景・ねらい]
- 搾乳作業の工程で搾乳・牛乳処理室から排出される汚水(以後牛乳処理汚水と呼ぶ)は塩素系殺菌剤を含むため活性汚泥法での浄化が困難である。そこで、順次排出される牛乳処理汚水から殺菌剤を含む汚水を電極で検知して除外し、牛乳などの有機物を含む汚水を分離・回収して、生物処理するシステムの確立を図る。
[成果の内容・特徴]
- 牛乳などの有機物主体の排水導電率は殺菌剤を含む排水に比べて低い(表1)。
- 牛乳処理室の排水路に1対の電極(SUS製)を設置して、電極が導電率で0.038‐0.062 Sm-1 の範囲を受感したときに原水ポンプを作動させると、有機物を含む汚水を判別分離することができる(図1)。
- 1回分(1/2日)の牛乳処理汚水(総水量435 L)を電極を用いて判別すると、310 Lの汚水(以後分離汚水と呼ぶ)を分離・回収できる。分離汚水には牛乳処理排水の全有機物量の86.9 %を含み、96.2 %の残留塩素を除去できる(表1)。
- 分離汚水(COD400 mg/L)を回分槽(2000.7.3稼働)に投入して、1日2サイクル、滞留日数1.2日、MLSS3500 mg/Lの回分式活性汚泥法で処理すると、活性汚泥のダメージはみられず、COD15 mg/L、SS6.5 mg/L、透視度26の処理水が得られる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 普及にあたっては、各々の農家で使用している殺菌剤、洗剤の種類、量に応じて電極の判別範囲レベルを調節すること。
- きょう雑物が電極へブリッジしないよう定期的に点検すること。
- 回分槽容積は分離汚水量に基づいて決定し、運転条件は実験プラントを参考に設定すること。
- 非分離汚水中の塩素の低減の可能性について検討する必要がある。
[その他]
研究課題名:電極を用いた搾乳・牛乳処理汚水の汚水処理システムの確立
予算区分 :府単
研究期間 :平成12年度
研究担当者:安富政治、岩間仁志
発表論文等:電極判別による搾乳・牛乳処理汚水の汚水処理システム、京都畜研成績41号掲載予定
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