新生子豚への乳酸菌の早期経口投与による下痢防止


[要約]
新生子豚に出生時から5日間、乳酸菌製剤5gを代用乳でペースト状にして強制経口投与し、更に餌付けから35日齢まで飼料に0.1%添加すると、下痢の延べ発生回数は23%に減少し、抗病性の指標である好中球NBT還元能、App抗体価が有意に上昇する。
京都府畜産研究所・中小家畜部
[連絡先]0773-47-0301
[部会名]畜産
[専  門]飼育管理
[対  象]豚
[分  類]研究

[背景・ねらい]
 養豚経営では子豚の下痢が発育停滞や疾病に対する抵抗性の低下などの誘引となり被害が大きいため、予防策として抗菌剤が多用される状況にある。しかし、安全な畜産物の生産や低コスト生産の観点からは、抗菌剤の使用量は少ないことが望ましい。
 そこで、非抗菌性物質である乳酸菌製剤を新生子豚に投与することにより、下痢を抑制し抗病性を強化する飼養管理法について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 新生子豚15頭(1区当たり5頭)を供試し、試験期間は出生から77日齢(30日齢離乳)までとする。各区とも飼料は市販の人工乳前・後期、子豚育成用配合飼料とする。乳酸菌区は豚腸管由来株の Enterococcus faecalisと、Lactobacillus acidophilusを含む製剤5gとオリゴ糖1gを代用乳2mLでペースト状にし、出生から5日間1日1回強制経口投与し、更に餌付けから35日齢まで飼料に0.1%添加する。抗菌剤区は35〜41日齢の間、飼料に3種類の抗菌剤を追加添加する。
  2. 77日齢までの下痢の延べ発生回数は無添加区と比較して、抗菌剤区が50%、乳酸菌区が23%に減少する(表1)。
  3. 細胞性免疫の指標である好中球NBT還元能、液性免疫の指標であるアクチノバシラス症(App)抗体価は、77日齢では乳酸菌区が無添加区、抗菌剤区に比べていずれも有意に上昇する(表2表3)。
  4. 各区の増体量に有意差はなく、乳酸菌区では36〜77日齢の飼料消費量が少ない(表4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 分娩房、離乳房共にスノコ式の構造であり、水洗乾燥後、妊娠豚又は離乳子豚を導入する直前に逆性石けん液を散布し、消毒している。
  2. 強制経口投与する乳酸菌は投与日ごとに調製したものを使用する。

[その他]
研究課題名:乳酸菌の早期経口投与による子豚の下痢防止
予算区分 :府単
研究期間 :平成11年度(平成9〜11年度)
研究担当者:八谷純一、山本哲也、岩井俊暁
発表論文等:乳酸菌の早期経口投与による子豚の下痢防止、京都畜研成績、40号掲載予定

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