ウシ体外受精胚の超急速ガラス化保存技術


[要約]
ガラス化保存容器にゲル・ローディング・チップを用い、ウシ体外受精胚を超急速ガラス化すると、胚盤胞への発生率は全ての日齢で高く、新鮮胚とかわらない。
兵庫県立中央農業技術センター・生物工学研究所
[連絡先]0790-47-1117
[部会名]畜  産
[専  門]バイテク
[対  象]牛
[分  類]研究

[背景・ねらい]
 ウシ体外受精胚は凍結傷害を受けやすく、特に初期胚の保存は困難である。そこで、ガラス化のための容器として管腔の内径が細いゲル・ローディング・チップを用いることにより、極めて速い速度で胚を冷却する超急速ガラス化法を体外受精7日目までの初期胚に応用した。

[成果の内容・特徴]

  1. GL-チップは先端部分が細くて長いチップであり、オートピペットに取り付けて一定の液量を吸引することができる。胚を吸引できる径のところまで細い部分を切断し、ガラス化容器とした(図1)。細い部分の内径は約200μmであり、胚の直径よりもやや大きい(図2)。
  2. ガラス化液中の胚が細い部分に留まり、超急速ガラス化するように、液量を0.5〜0.7μLに調節した。
  3. 体外受精および体外培養はUllahらの方法(1997)に準じて行った。受精1、2、3、4、5、および7日目胚を超急速ガラス化法で保存した。
  4. ガラス化法としてはVajtaらの方法(1998)を修正し、ガラス化容器にGL-チップを用いた。ガラス化液(0.6Mスクロース+20%エチレングリコール+20%DMSOを含む20%血清加TCM199液)に胚を入れ、GL-チップを取り付けたピペットで0.5〜0.7μLのガラス化液とともに胚をGL-チップ内の細い管腔部分に吸引後、液体窒素へ浸漬して保存した。融解は、加温した希釈液(0.25Mスクロースを含む33%血清加TCM199液)にGL-チップ先端を浸漬して行った。融解後はそれぞれの対照新鮮胚と同様の方法で7日目まで培養し、胚盤胞への発生率と胚盤胞の細胞数を比較した。
  5. ガラス化したすべての日齢において、新鮮胚と有意差のない胚盤胞への発生率が得られた(図3)。また、細胞数ならびに内部細胞塊比率においても新鮮胚と差はみられなかった(表1)。

[成果の活用面・留意点]

    初期胚に適用できるため、経腟採卵由来胚や核移植のドナー胚の保存が可能である。

[その他]
研究課題名:高能力クローン牛の効率的生産技術の開発
予算区分  :国庫補助、地域先端
研究期間  :平成11年度(平成9〜13年)
研究担当者:浜田由佳子、冨永敬一郎、有吉哲志
発表論文等:第92回日本繁殖生物学会、口頭発表、1999.

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