マイクロドロップレット法によるウシ受精卵クローンドナー細胞の凍結保存


[要約]
経膣採卵・体外受精により作出される胚を効率的にウシ受精卵クローン作出のためのドナー細胞として用いるために、ガラス化保存法であるマイクロドロップレット法による凍結保存について検討した。その結果、同法で凍結保存した体外受精胚はドナー細胞として新鮮胚とほぼ同様に利用できることを確認した。
広島県立畜産技術センター・生物工学部
[連絡先]08247-4-0331
[部会名]畜産
[専  門]繁殖
[対  象]肉用牛
[分  類]研究

[背景・ねらい]
 ドナー細胞の凍結保存はウシ受精卵クローン技術の実用化に大きく貢献するが、従来法(緩慢凍結法)により凍結保存した体外受精胚をドナー細胞としたクローン胚の発生率は低いものであった。本研究では、初期胚の凍結保存に有効であると考えられるマイクロドロップレット法を体外受精由来桑実胚の凍結保存に応用し、凍結ドナー細胞をもちいたクローン胚の発生率向上を目的とした。

[成果の内容・特徴]

  1. マイクロドロップレット法によるガラス化保存液には40%エチレングリコール+1.0Mショ糖+20% FCSを含むTCM199培地を用いた。
  2. 体外受精5日目の桑実胚を凍結・融解後、発生率について調査した結果、胚の脱出率はマイクロドロップレット法区(MD区)57.8%(48/83)であり、緩慢凍結法区(緩慢凍結区)39.1%(27/69)よりも有意に高く(P<0.05)、未凍結・未処理の対照区67.0%(59/88)と有意な差は認められなかった(表1)。
  3. 凍結・融解後の体外受精由来桑実胚をドナー細胞とした核移植胚の胚盤胞への発生率はMD区42.3%(175/414)であり、緩慢凍結区31.6%(89/282)よりも有意に高く(P<0.05)対照区48.7%(55/113)と有意な差は認められなかった(表2)。
  4. 胚日齢7日目に胚盤胞に発育した核移植胚の構成総細胞数は、MD区116.3±6.7であり、対照区129.9±8.9との間に有意な差は認められなかった(表3)。
  5. 核移植胚の受胎率はMD区で55.6%(10/18)であり、対照区59.1%(13/22)と差のない値が得られた(表4)。

[成果の活用面・留意点]

     受精卵クローンドナー細胞としての体外受精由来桑実胚の凍結保存技術がほぼ確立され、ドナー細胞の効率的利用および計画的なクローン作出が可能となる。

[その他]
研究課題名:受精卵クローン牛生産技術の開発
          (優良種畜の安定的大量生産技術の開発)
予算区分 :国補(地域先端)
研究期間 :平成12年度(平成6〜13年)
研究担当者:今井 昭、原田 佳積、松重 忠美
発表論文等:マイクロドロップレット法で凍結保存した体外受精桑実期胚をドナー細胞とした核移植の検討、第42回中国地区連合獣医師大会、2000.

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