ウシMx遺伝子のゲノム構造および転写調節領域


[要約]
妊娠初期に高発現であり、妊娠への関与が示唆されるMx遺伝子は、ウシにおいては選択的スプライシングにより少なくとも二つのスプライシングヴァリアントが存在し、うち一つの転写調節領域に機能的配列が認められる。
中国農業試験場・畜産部・育種繁殖研究室
[連絡先] 0854-82-0144
[部会名] 畜産
[専  門] 育種遺伝性能調査
[対  象] 肉用牛
[分  類] 研究

[背景・ねらい]
 妊娠30日齢(黒毛和種)牛の子宮小丘部内膜のcDNAライブラリーから単離した抗ウイルスタンパク質Mxは、I型インターフェロンによって発現誘導を受けること、ウシやヒツジでは妊娠初期に胎子の栄養膜細胞がインターフェロン・タウを分泌し、母胎に着床シグナルを伝達すること、またMxタンパク質が実際にヒツジの妊娠初期に子宮内膜で高発現であることから、妊娠成立・維持に重要な機能を持つ可能性が考えられる。さらに当研究室は、単離したMx遺伝子が既知のウシMx1と異なる新規のMx遺伝子であることを明らかにしている。そこで、このMx遺伝子(Mx1Bと仮称)およびMx1のゲノム構造および転写調節領域の解析を行い、両遺伝子の関係および発現調節機構について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. LA(Long and Accurate) PCR(Takara)の結果から、ウシMx1遺伝子はMx1の5'翻訳領域(CR)の後にMx1Bの5'非翻訳領域(UTR)および5'-CR、さらにMx1/Mx1B共通のCRと続くゲノム構造をとり、ウシMxは種独自の選択的スプライシングによって、少なくともMx1、Mx1Bという二つの機能的なスプライシングヴァリアントを有している(図1)。
  2. ウシMx1B遺伝子の転写調節領域にはinterferon stimulated response element(ISRE)とTATA-boxが存在し、これらを含む部位にウシ8品種間で遺伝的変異は認められない(図2
  3. 現在未報告のウシMx1遺伝子の5'-UTRについて遺伝子を増幅し、塩基配列を決定した結果、Mx1Bの5'-UTRと53%の相同性であり、Mx1Bのそれに存在する機能的配列は認められない(図2)。

[成果の活用面・留意点]

    Mx1B遺伝子の転写調節領域には多型が認められなかったが、その周辺部位、特に5'-CRに遺伝的変異およびアミノ酸変異が存在する可能性があり、それによる機能の変化が予想されるため、その検出法について検討を行っていくことが重要である。

[その他]
研究課題名:妊娠認識・維持に関与する候補遺伝子の多型解析
予算区分  :動物ゲノム
研究期間  :平成12年度 (平成9年〜12年)
研究担当者:小島孝敏、小松正憲、大島一修

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