脂肪細胞分化制御遺伝子PPARγの和牛ロース部分における発現変動
- [要約]
- 脂肪細胞の分化制御遺伝子PPARγのロース部分における発現は、黒毛和種去勢牛では育成期でほとんど無く、肥育に伴い発現量の明確な増大が見られるが、同月齢の褐毛和種繁殖牛(土佐系)では、このような発現量の増大は見られない。
中国農業試験場・畜産部・産肉利用研究室
[連絡先] 0854-82-2047
[部会名] 近畿中国(畜産)・畜産
[専 門] 生理
[対 象] 肉用牛
[分 類] 研究
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[背景・ねらい]
- PPARγ遺伝子は脂肪細胞の形成に先立って発現し、その形成を制御していることが明らかにされたため、PPARγを脂肪交雑(霜降り)の分子指標として活用するための情報が強く求められている。そこで、一般的に脂肪交雑が形成され易いと言われている黒毛和種去勢牛を用い、そのロース部分におけるPPARγの発現量を育成期と肥育期で比較する。また、褐毛和種繁殖牛(土佐系)のロース部分におけるPPARγの発現量を測定し、黒毛和種去勢肥育牛における結果と比較する。
[成果の内容・特徴]]
- 黒毛和種去勢牛のロース部分におけるPPARγ遺伝子の発現は、育成期(6〜8ヶ月齢)及び肥育開始期(11ヶ月齢)ではほとんど無く、肥育開始後4ヶ月目に相当する14ヶ月齢から顕著に増加する(図1)。
- 褐毛和種繁殖牛(土佐系)のロース部分におけるPPARγ遺伝子の発現は、11〜17ヶ月齢の間ではほとんど無い(図2)。
- 黒毛和種去勢牛では、12〜13ヶ月齢頃から脂肪交雑の増加が見られることが報告されている。今回観察されたPPARγの発現量の増大はこの時期とよく一致しており、PPARγ遺伝子の発現は脂肪交雑形成の開始時期に関する分子指標となり得る。
[成果の活用面・留意点]
黒毛和種去勢牛の肥育は10か月齢から濃厚飼料の飽食で行なった点に留意する必要がある。また、褐毛和種繁殖牛には肥育を行っていない点に留意する必要がある。
[その他]
研究課題名:和牛における脂肪蓄積遺伝子の筋肉内発現による脂肪交雑判定技術の開発
予算区分 :大型別枠(形態・生理)
研究期間 :平成12年度(平成10〜12年)
研究担当者:相川勝弘,柴田昌宏,村元隆行
発表論文等:なし
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