肥育牛へのβ−カロチン給与で牛肉の変色を抑える技術


[要約]
黒毛和種去勢肥育牛に1日1頭当たり7,500mgのβ-カロチンを屠殺前の28日間給与すると、展示中の牛肉のメトミオグロビン生成量が低くなる傾向にあり牛肉が茶褐色に変色するのが抑えられる。
中国農業試験場・畜産部・産肉利用研究室
[連絡先] 0854-82-2047
[部会名] 近畿中国(畜産)、畜産、草地(飼料利用)
[専  門] 加工利用
[対  象] 肉用牛
[分  類] 研究

[背景・ねらい]
 肥育牛に抗酸化物質であるビタミンEを給与すると展示中の牛肉の変色を抑えられることが知られているが、ビタミンEと同様に抗酸化作用があるβ-カロチンの給与が展示中の牛肉の肉色安定性に及ぼす影響については検討されていない。そこで、肥育牛へのβ-カロチン給与が展示中の牛肉の肉色安定性に及ぼす影響を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 黒毛和種去勢肥育牛に1日必要量の約100倍量である7,500mgのβ-カロチンを屠殺前の28日間給与すると、展示中の半膜様筋および腰最長筋のメトミオグロビンの割合が30から40%に到達するのが遅くなる傾向にあり、牛肉が茶褐色に変色するのが抑えられる(図1)。
  2. 肥育牛に7,500mgのβ-カロチンを屠殺前の28日間給与すると、β-カロチンの含量が血漿では約40倍、半膜様筋および腰最長筋では約7倍に増加する(表1)。
  3. 肥育牛に1日必要量の約100倍量のβ-カロチンを屠殺前の28日間給与しても、半膜様筋および腰最長筋の黄色度(b* 値)は高くならない。また、皮下脂肪の黄色化もみられない。

[成果の活用面・留意点]

  1. β-カロチン給与はβ-カロチン10%含有量の経口投与で行った。
  2. 展示とは食肉店における食肉の陳列方法(蛍光灯4℃での陳列)の模倣である。
  3. 牛肉のメトミオグロビン割合が30から40%に到達すると消費者の購買意欲がなくなると報告されている。
  4. イタリアンライグラスの牧草地で肥育を行った牛の胸最長筋のβ-カロチン含有量は64μg/100g(0.64mg/kg)であったと報告されている。

[その他]
研究課題名:肉色および柔らかさに関与する粗飼料成分の解明
予算区分  :畜産対応研究「自給飼料基盤」
研究期間  :平成12年度(平成10〜12年)
研究担当者:村元隆行、相川勝弘、柴田昌宏

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