温風乾燥処理した厨房残さのブタにおける飼料利用


[要約]
130℃で9〜10時間温風乾燥処理した厨房残さの、平均的な栄養価はDCP10.5%、TDN84.2%で、3カ月の常温保存では成分含量や物理性に変化は見られず、豚用飼料原料としての配合利用が可能である。ブタの発育成績と排泄ふん臭気、枝肉の脂肪厚と脂肪酸組成および食味に影響を及ぼさない実用的なCP代替レベルは25%程度である。
滋賀県農業総合センター畜産技術振興センター・バイテク・環境担当
[連絡先]0748-52-1221
[部会名]畜産推進部会
[専  門]環境保全
[対  象]豚
[分  類]行政

[背景・ねらい]
 食料自給率の向上や環境への負荷軽減が求められている近年、食品廃棄物のリサイクルが注目されており、各種の生ゴミ処理機が開発されている。その中で今回、水分調整材や発酵菌等の添加を必要とせず、操作が簡易でコンパクトな温風乾燥処理機に着目した。これによる処理物は汚物感がなく、一般流通飼料との混合も可能であり、飼料原料としての利用が期待できる。そこで本試験では厨房残さの資源としての有効活用を図るため、ブタにおける飼料化の実用性について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 温風乾燥処理された食堂由来厨房残さの一般成分は、処理ロット毎の変動はあるが、市販配合飼料に比べCP、粗脂肪、粗灰分の値が高い。しかし、CP消化率は低く、DCP10.5%、TDN84.2%と計算され、低蛋白高エネルギーの飼料原料である(表1)。
  2. 3カ月間の常温保存では、成分組成や物理性に変化はみられないが、過酸化物価が16.9から36.5meq/kgへと上昇し、脂肪の酸化が進む。
  3. 飼養試験は、給与飼料中のCPを乾燥残さ由来のCPで10、25、50%代替する各試験区を設定し、体重約30kgの育成豚を用い、1群4頭の群飼により体重約110kgまで実施した。
  4. 50%代替区は飼料摂取量が減少し、平均体重も低く出荷までの飼養期間が延長する(図1)。また、枝肉背脂肪の不飽和脂肪酸(C18:2、C18:3)が増加する(表2)。
  5. 10および25%代替区では飼養成績、枝肉成績とも対照区と全く差を示さない。
  6. 排泄ふん臭気は、代替率が高いほど硫黄化合物が増加するが、低級脂肪酸は逆に減少し臭気指数も低下するため、乾燥残さ給与により臭気が強くなることはない(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 社員食堂や一般家庭等の排泄元で処理することにより、コストの分散、異物除去等分別モラルの向上が期待でき、食品リサイクルの行政施策に活用できる。
  2. 加熱によるCP消化率の低下と保存による脂肪の酸化がみられたことから、処理温度および保存方法等についてさらに検討する必要がある。

[その他]
研究課題名:温風乾燥処理された食品残さのブタにおける飼料化技術
予算区分  :県単
研究期間  :平成11年度
研究担当者:渡辺千春、谷 浩、藤田 耕
発表論文等:温風乾燥処理された食品残さの豚における飼料化の検討、日本畜産学会第97会大会講演要旨、27、2000.

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