[成果情報名]

黒毛和種新生子牛に対する粉末初乳を用いた受動免疫の補強

[要約]黒毛和種新生子牛に対して凍結初乳や粉末初乳を補助的に給与した場合の血中免疫グロブリン濃度を比較したところ、初産母牛のように初乳の少ない母牛からの産子において効果が高く、積極的に給与すべきであると考えられる。
[キーワード] 飼育管理、肉用牛、粉末初乳、免疫グロブリン濃度、初産母牛
[担当]兵庫北部農技・畜産部
[連絡先]0796-74-1230
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 生後2時間以内に500g以上の初乳摂取量が必要であると報告されているが、実際に初乳をどれくらい哺乳したかを確認することは困難である。多くの繁殖現場では良質の初乳を確保することが困難であり、新たな対応が望まれていたが、粉末初乳が発売されて、肉用子牛でも利用できるようになっている。
 そこで、黒毛和種新生子牛に対して初乳を自然哺乳又は粉末初乳で給与した場合の血中免疫グロブリン(IgG)濃度を比較し、自然哺乳では産次との関係を明らかにするとともに、粉末又は凍結哺乳を利用した受動免疫の補強が可能であるかを検討する。

[成果の内容・特徴]

      黒毛和種新生子牛130頭(雄72頭、雌58頭)を母牛の初乳を自由に哺乳する自然哺乳区75 頭(初産11、2産13、3産以上51)、3種類の粉末初乳33頭(製品A:11、製品B:10、製品C:12)を規定量投与する区と分娩直後に粉末初乳(15頭)又は凍結初乳(7頭)を1回だけ投与する区とに無作為に分けた。粉末初乳区では分娩後30分以内とその7〜17時間後の2回、それぞれの粉末初乳の規定量を給与し、その間子牛に母乳を哺乳できないようにして試験を実施した。分娩24時間後に子牛の採血を行い、IgG濃度を一元放射免疫拡散法で測定した。また、粉末或いは凍結初乳を分娩直後に1回だけ給与後、自然哺乳を実施した場合のIgG濃度を比較して受動免疫の補強の可能性を検討する。
  1. 対照区の子牛の血中IgG濃度と母牛の産次との相関は、r=0.68と5%水準で有意であり、特に初産の母牛では免疫に必要とされるIgG濃度が確保されない場合もみられる(図1)。
  2. 分娩24時間後の子牛の血中IgG濃度は、粉末初乳区(8.8〜11.5mg/ml)で哺乳量の多い自然哺乳区(37.7mg/ml)に比較して有意に低いが、B区以外は免疫に必要な濃度10mg/mlは確保されている(図2)。
  3. 分娩直後に凍結初乳或いは粉末初乳を1回給与後は自然哺乳とすると、有意差はないものの初乳投与区では標準偏差が縮小し、最低必要とされる移行抗体が確保できる(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 最初の粉末初乳の給与は、分娩後できるだけ早く行う。

[具体的データ]

図1

図2

表1


[その他]
研究課題名自動哺乳装置を用いた黒毛和種子牛の集団哺育・育成システムの開発
予算区分県単
研究期間2000〜2002年度
研究担当者福島護之、坂瀬充洋、木伏雅彦、野田昌伸
発表論文等1)福島ら (2001) 第98回日本畜産学会大会:178
2)福島ら (2001) 肉用牛研究会大会 39:29-30

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