[成果情報名]

弱酸性次亜塩素酸ソーダ水による鶏卵洗浄技術

[要約]広い抗菌スペクトルをもち、かつ残留性が低く毒性が認められない弱酸性次亜塩素酸ソーダ水(有効塩素濃度30ppm並びに50ppm、以下、弱酸性水)と、GPセンターで一般的に使用される次亜塩素酸ソーダ水(有効塩素濃度150ppm)の鶏卵洗浄効果を比較したところ同等の効果が認められる。
[キーワード]採卵鶏、弱酸性次亜塩素酸ソーダ水、洗卵、卵殻、一般細菌数、卵質
[担当]岡山総畜セ・中小家畜部・養鶏科
[連絡先]0867-27-3321
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 鶏卵の賞味期限表示など鶏卵に関する安心・安全が注目されている中で、鶏卵生産での衛生対策を徹底させることは特に重要な課題となっている。環境保全の観点から消毒薬使用の低減化もふまえ、広い抗菌スペクトルをもち残留性が低く、かつ毒性が認められない弱酸性水は、すでに医療・食品産業関係で積極的に利用されつつある。そこで弱酸性水を用いて卵選別包装施設(以下GPセンター)に適用した場合の鶏卵洗浄効果を調査した。

[成果の内容・特徴]

  1. 洗浄による一般細菌数の減少を洗浄水温度22℃並びに55℃に設定した弱酸性水50ppmと次亜塩素酸ソーダ水150ppmで比較した結果、いずれの温度でも滅菌精製水よりも有意な一般細菌数の減少が認められる。弱酸性水50ppmと次亜塩素酸ソーダ水150ppmの間には有意な差がなく、同程度の洗浄効果が認められる(表1)。
  2. 洗浄直後のハウユニットは、洗浄水の種類並びに水温の差による有意な変化が認められない(表2)。このことは、弱酸性水による洗浄が卵質への影響がないことを示唆する。
  3. 採卵鶏10万羽飼養規模の農場内GPセンターにおいて、処理能力20,000個/hの洗卵機を用いて実証試験を行う。弱酸性水30、50ppm、及び次亜塩素酸ソーダ水150ppmは、水道水と比較すると一般細菌数が有意に減少する(表3)。洗浄直後、2日後でのハウユニットは、弱酸性水30、50ppm、次亜塩素酸ソーダ水、及び水道水の間には有意な差を認めない(表4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 弱酸性水30ppm、50ppm及び次亜塩素酸ソーダ水150ppmは卵殻表面の一般細菌数を減少させる同程度の効果を有し、ハウユニットの変化に差を認めないことから、卵殻洗浄に有効な素材と考えられる。
  2. 弱酸性水は、30ppmと低い有効塩素濃度で使用可能なことから多量の洗浄排水による環境への影響が少なく、安心・安全な鶏卵を供給する一方法として、弱酸性水は有効であると推察される。
  3. コスト面での弱酸性水は、弱酸性水生成装置の初期投資が必要であるが、次亜塩素酸ソーダ(0.015%)、逆性石鹸(0.2%)等と比較してランニングコストは同等と考えられる。

[具体的データ]

表1

表2

表3

表4


[その他]
研究課題名安全な鶏卵生産における微生物制御方法の確立
予算区分県単
研究期間1998〜2001年度
研究担当者松馬定子、山内章江、森 尚之
発表論文等1)山内ら(2000)岡山県総合畜産センター研究報告 11:63-66
2)松馬ら(2001)岡山県総合畜産センター研究報告 12:51-54
3)松馬ら(2002)岡山県総合畜産センター研究報告 13:(掲載予定)

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