[成果情報名]

ストローカット法による牛初期胚のガラス化保存

[要約]斜めに切断した凍結用ストローの先端部分に、牛初期胚を含むガラス化液でドロップを作成し超急速に冷却すると、胚盤胞期以降に発育した胚で培養方法に依存しない高い生存率が得られる。また、この方法で保存したクローン胚を移植し生存産子を生産した。
[キーワード]繁殖、ストローカット法、ガラス化保存、牛初期胚、生存率、妊娠
[担当]徳農技セ畜産研・乳肉用牛担当
[連絡先]088-694-2023
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 胚をストロー内に封入する従来のガラス化法は冷却速度が遅く、高い生存率を得るためにはある程度の経験が必要である。最近、極少量のガラス化液に胚を浸漬し、超急速に冷却保存する方法が開発されているが、ガラス化後の胚の取り扱いが煩雑である。
 そこで、大量に作出されるウシ体外受精胚やクローン胚の保存方法として、さらに簡易的で再現性と生存性の高い保存技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. ガラス化液は、20%エチレングリコール+20%DMDSO+0.3mショ糖を含む3mg/ml BSA添加PBSを用いた。凍結は斜めに切断した凍結用ストローの先端部分に胚を含む凍結液1μl でドロップを作り開放状態で直接液体窒素中に投入して行った(写真1)。
  2. 体外受精胚を用いた発育ステージ別の生存率は、後期桑実期(CM)〜初期胚盤胞期(eBla)(T区)71.9%、胚盤胞期(Bla)(U区)90.5%、拡張期胚盤胞期(ExBla)(V区)92.6%であり、胚盤胞期以降で高い生存性を示した(表1写真2)。
  3. 体外受精胚を用いた培養方法別の生存率は、マウス胎子線維芽細胞と共培養した区(10%FCS-199(MFF))93.3%、血清添加し非共培養した区(5%FCS-CR1aa)97.2%、無血清で非共培養した区(IVD101)90.5%であり、培養方法の影響を受けずに高い生存性を示した(表2)。
  4. 体細胞クローン胚をストローカット法でガラス化保存した結果、生存率82.5%、脱出率42.5%であった(表3)。
  5. ストローカット法によりガラス化保存したクローン胚を受胚牛に移植した結果、3頭中2頭が妊娠し、内1頭が241日目に流産、1頭が271日目に双子を分娩した(表4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. フラクチャー傷害が発生する場合があるので注意が必要である。
  2. ガラス化保存胚を移植しデーター蓄積を図る必要がある。

[具体的データ]

表1

表2

表3

表4

写真1

写真2


[その他]
研究課題名優良種畜の安定的大量生産技術の開発
予算区分国補(先端技術)
研究期間1996〜2001年度
研究担当者笠井裕明、福見善之、後藤充宏
発表論文等1)笠井ら(2000)、第10回西日本胚移植学会:33
2)笠井ら(2001)、家畜人工授精205:15〜21

目次へ戻る