[成果情報名]

Liriomyza属3種ハモグリバエの発育と増殖能力

[要約] インゲンマメを寄主にした場合の3種ハモグリバエの発育零点及び有効積算温度は、トマトハモグリバエが10.7℃及び248.1日度、マメハモグリバエが9.8℃及び251.3日度、ナスハモグリバエが8.1℃及び316.5日度である。増殖能力はトマトハモグリバエが最も高い。
[キーワード]トマトハモグリバエ、マメハモグリバエ、ナスハモグリバエ、発育、増殖
[担当]京都農総研・環境部、京都府立大学・農学研究科・応用昆虫学研究室
[連絡先]0771-22-6494、s-tokumaru64@mail.pref.kyoto.jp
[区分]近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 トマトハモグリバエは、我が国では1999年に初めて発見され、それ以降、西日本を中心に発生が確認されている。発生地ではトマト、キュウリ等に大きな被害を与えている。また、本種は同属のマメハモグリバエ及びナスハモグリバエと同時に発生することもある。これら3種ハモグリバエの防除対策上の基礎資料とするために、日本産個体群の生物学的特性をそれぞれ明らかにし、比較検討する必要がある。そこで、Liriomyza属3種ハモグリバエの発育に及ぼす温度・日長の影響並びに増殖能力を同一条件下で比較する。

[成果の内容・特徴]

  1. 1.インゲンマメを寄主にした場合の産卵から羽化までの発育所要日数は、トマトハモグリバエ及びマメハモグリバエでは15〜30℃の範囲で、ナスハモグリバエでは15〜25℃の範囲で高温になるほど短くなる(表1)。18℃では、3種ハモグリバエはいずれも短日条件下で発育が遅延する(表1)。3種ハモグリバエの発育零点及び有効積算温度は、トマトハモグリバエが10.7℃及び248.1日度、マメハモグリバエが9.8℃及び251.3日度、ナスハモグリバエが8.1℃及び316.5日度である(表2)。羽化率は3種とも25℃で最も高い(表1)。
  2. インゲンマメを寄主にした場合の総産卵数は、トマトハモグリバエが639.6個と3種の中で最も多く、次いでマメハモグリバエが203.6個、ナスハモグリバエが91.4個である(表3)。日当たり産卵数は、トマトハモグリバエが26.1個と最も多く、次いでマメハモグリバエが11.5個、ナスハモグリバエが10.3個である(表3)。雌成虫の寿命は、トマトハモグリバエが28.1日と3種の中で最も長く、次いでマメハモグリバエが18.6日、ナスハモグリバエが9.0日である(表3)。雄成虫の寿命は、トマトハモグリバエが8.8日と最も長く、次いでマメハモグリバエが7.8日、ナスハモグリバエが4.9日である(表3)。
  3. インゲンマメを寄主にした場合の内的自然増加率は、トマトハモグリバエが0.21で最も高く、次いでマメハモグリバエが0.17、ナスハモグリバエが0.12である(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. トマトハモグリバエの増殖能力は高いので、発生初期に防除の徹底を図る。
  2. 発育零点及び有効積算温度を用いた発生消長の予測に利用できる。

[具体的データ]








[その他]
研究課題名侵入害虫トマトハモグリバエの生態解明と防除方法の検討
予算区分国補(発生予察総合推進事業)
研究期間2001〜2003年度
研究担当者徳丸 晋、阿部芳久(京都府立大学農学研究科)
発表論文等徳丸・阿部(2003)応動昆47:143-152.

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