[成果情報名]

水稲の疎植栽培における育苗箱施用殺虫剤の効果

[要約] 水稲の機械稚苗移植において、株間を拡大するか、苗かき取り量を減じる疎植栽培により、育苗箱施用殺虫剤の10a当たり使用量が慣行の60%程度に削減されるが、主要害虫に対する防除効果は、慣行とほぼ同等である。
[キーワード]イネ、疎植栽培、育苗箱施用、殺虫剤
[担当]愛媛県農業試験場・生産環境室
[連絡先]電話089-993-2020、電子メールmitsuda-kazuhiko@pref.ehime.jp
[区分]近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 水稲における育苗および苗運搬労力の軽減を図るため、使用育苗箱数を減少させる疎植栽培が検討されている。疎植栽培では、10a当たりの使用育苗箱数が減少するため、箱当たりで定められている育苗箱施用殺虫剤の使用量も減少する。そこで、慣行の使用育苗箱数を大きく削減した疎植栽培での主要害虫に対する防除効果を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. フィプロニル(1%)粒剤(50g/箱)の育苗箱処理苗を用いて、株間を拡大して移植した場合、10a当たりの育苗箱および薬剤の使用量は、株間18p(慣行)と比較して、 24pで77〜82%、30pで62〜68%に削減され、主要害虫に対する防除効果は、いずれも慣行とほぼ同等である(表1)。
  2. フィプロニル(1%)粒剤(50g/箱)の育苗箱処理苗を用いて、株間を30pにした場合の稲体中のフィプロニル濃度は、慣行と比較して、移植20、30日後にやや早く低下するが、40〜70日後まで、ほぼ同等の濃度が維持される(図1)。
  3. イミダクロプリド(2%)・スピノサド(0.75%)粒剤(50g/箱)の育苗箱施用、移植当日処理苗を用いて、株間を30pにした場合、10a当たりの育苗箱および薬剤の使用量は、慣行と比較して、65%に削減され、主要害虫に対する防除効果は、慣行とほぼ同等である(表2)。
  4. フィプロニル(1%)粒剤(50g/箱)の育苗箱処理苗を用いて、苗かき取り量を減じた場合、10a当たりの育苗箱および薬剤の使用量は、慣行の80%に削減され、主要害虫に対する防除効果は慣行とほぼ同等である(表3)。
  5. フィプロニル(1%)粒剤(50g/箱)の育苗箱処理苗を用いて、苗かき取り量を減じて、さらに株間を30pにした場合、10a当たりの育苗箱および薬剤の使用量は、慣行の51%に削減され、主要害虫に対する防除効果は、移植49日後まではほぼ同等であるが、59日後にはやや低下する(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 育苗箱への薬剤散布にあたっては、施用量を遵守し、撒きむらのないように散布する。
  2. 株間24pまでの疎植は、現行の乗用型田植機で対応が可能であるが、それ以上の株間については、疎植対応の田植機が必要である。
  3. 本試験での疎植区の収量は、慣行に比べやや減となったが、同一圃場内での試験で、施肥等の栽培管理を慣行区中心で行ったことによる。
[具体的データ]






[その他]
研究課題名水稲省力低コスト栽培技術体系現地実証試験
予算区分国補(地域実用化)
研究期間2000〜2003年度
研究担当者密田和彦、山崎康男、毛利幸喜、石丸治郎

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