[成果情報名]

イネ内穎褐変病菌の種籾、イネ刈り株からの伝染

[要約] イネ内穎褐変病菌Erwinia ananasは、種籾、イネ刈り株および稲わらで越冬し、これらが主要な第一次伝染源となる。
[キーワード]イネ内穎褐変病菌、Erwinia ananas、伝染源、種籾、イネ刈り株、稲わら
[担当]鳥取農試・環境研究室
[連絡先]電話0857-53-0721、電子メールhasegawam@pref.tottori.jp
[区分]近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 水田においてイネ内穎褐変病菌Erwinia ananasはイネの枯死組織で生存し、保菌組織の接触、ツマグロヨコバイ等の昆虫によって上位に伝播され、開花期に籾に感染する(長谷川ら2000)。しかし、本病原細菌の第一次伝染源については不明な点が多い。このため、野外に存在する病原細菌の検出を目的として、病原細菌の選択培地 (NSVC-In) を作製した(長谷川ら 2003)。そこで、NSVC-In培地を用いて、種籾、稲わら、畦畔雑草等からの病原細菌の検出を行い、本病の第一次伝染源を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. イネ内穎褐変病菌は発病籾および発病籾を取り除いた見かけ上は健全種籾にも存在し、種籾から苗に移行する。また、病原細菌は苗の枯死組織で生存し、高湿度条件下では24時間で急激に増殖する(表1)。病原細菌は浸種液および播種・出芽後の育苗土間隙水にも生存することから、浸種中あるいは育苗中に健全種籾あるいは健全苗に感染すると考えられる(表2)。
  2. 病原細菌はイネ刈り株の地上部、同基部および田面に放置された稲わらで越冬し、とくにイネ刈り株の基部に多く生存する。また、病原細菌は入水直前のイネ刈り株の基部および移植直前の田面水にも生存し、代かきによって田面水中に拡散され、移植によってイネ株に感染すると考えられる(表3)。
  3. 7種類の雑草から病原細菌は検出されず、また、これらの雑草の枯死組織における病原細菌の増殖能力はイネ枯死葉身の増殖に比較すると低い(表4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 病原細菌は田面水から検出されることから、給排水を通して他の水田にも伝播される可能性がある。
  2. 伝染源としての畦畔雑草の評価について結論を出すには、より多くの雑草について根圏等を含めた調査が必要である。
  3. 本病に対する種子消毒および稲わら等を秋に鋤込むことによる防除効果については未検討である。

[具体的データ]



[その他]
研究課題名売れる米つくりのための病害虫管理技術の確立
予算区分県単
研究期間2001〜2003年
研究担当者長谷川優
発表論文等 1)長谷川優ら(1999)日植病報 65:365(講要).
2)長谷川優ら(2002)日植病報 68:259(講要).

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