[成果情報名]

幼穂形成期のNDVIと気象要因、穂肥施用量による水稲の収量推定

[要約] 水稲ヒノヒカリにおいて、分光放射計による幼穂形成期のNDVI(正規化植生指数)、気象要因および穂肥施用量から収量推定が可能である。
[キーワード]水稲、ヒノヒカリ、収量推定、NDVI、気象要因、穂肥施用量
[担当]広島農技セ・環境資源研究部
[連絡先]0824-29-2590、ngckanshigen@pref.hiroshima.jp
[区分]近畿中国四国・生産環境(土壌・土木・気象)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 水稲の安定生産のためには生育診断に基づく肥培管理が不可欠である。現在は葉色診断が行われているが、非破壊非接触で測定できるNDVI(植生の多少・活性度を示す指標)もほ場あるいは群落単位で生育診断に応用できる可能性がある。そこで、幼穂形成期のNDVIと気象要因、穂肥施用量から水稲ヒノヒカリの収量推定を行う。

[成果の内容・特徴]

  1. 施肥量(窒素施用量:基肥(塩化リン安);0〜0.6kg/a、中間追肥(同左);0.2kg/a、穂肥(NK化成);0〜0.4kg/a)を変えて栽培したヒノヒカリについて、幼穂形成期に波長675nm(赤色域光)と850nm(近赤外域赤外)の波長の分光放射係数を、視野角10度、高さ1.7m、俯角30度で、午前10時〜午後3時に順光条件下で分光放射計を条方向に向けて測定し、NDVI[{R850(850nmの分光反射係数、以下同様)−R675}/{R850+R675}]を計算する。
  2. 幼穂形成期のNDVIは冷夏であった2003年度を除いて収量と相関が認められるが、2000〜2003年度全体ではNDVIと収量の間に単相関はない。また、単年度でNDVIと収量に相関が認められた2000〜2002年度についても通年すると収量との単相関はなく(表1)、幼穂形成期以後の気象要因や穂肥施用の影響が考えられる。
  3. 2000〜2003年度について収量を目的変数とし、幼穂形成期のNDVI、穂肥施用量、気象データを説明変数として重回帰分析(減少法(F_out値=2.0))を行うと、Y=248X1+3.58X2+10.1X3+8.1X4+4.41X5−422、R2=0.863、n=88(Y:収量(kg/a)、X1:NDVI、X2:穂肥施用量(kg/a)、X3:最低気温(℃)、X4:平均降水量(mm/d)、X5:日照時間(hrs/d)、ただしX3〜X5は幼穂形成期から収穫期までの期間の平均値)が成り立つ。また、分散分析により重回帰式は1%水準で有意であり(表23)、推定値と実測収量の標準誤差は3.80となる(図1)。
  4. 以上の結果、水稲ヒノヒカリにおいて、分光放射計による幼穂形成期のNDVIと幼穂形成期から収穫期までの最低気温、平均降水量、日照時間の期間平均値、穂肥施用量により収量が約74%の確率で推定できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. この重回帰式モデルによる他年次あるいは気象の異なる他地域での収量予測及び穂肥施用時の診断技術としての適合性を検証する必要がある。
  2. 気象要因は三ヶ月予報等を参考にして推定する。
  3. ヒノヒカリ栽培における慣行の施肥体系(基肥・追肥・穂肥)での技術であり,基肥窒素量0.6kg/a,穂肥窒素量0.4kg/aまでの範囲で適用する。

[具体的データ]





[その他]
研究課題名リモートセンシングによる農地の立地環境の把握と農地管理への応用、分光放射計を用いた 水稲収水稲収量量・品質の把握
予算区分受託
研究期間1999〜2002年度、2003年度
研究担当者金本健志、加藤淳子、谷本俊明

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