[成果情報名]

蒸気並びに蒸気散水処理が土壌の化学性に及ぼす影響

[要約] 作土層の硝酸態窒素は蒸気散水処理により、直後はかなり減少するが、腐植含量の高い土壌では3週間後に処理前の80%程度の量まで回復する。交換性マンガンは蒸気、蒸気散水処理で著しく増加するが、約2ヶ月後に処理前とほぼ同じ量になる。
[キーワード]蒸気、散水、土壌化学性、硝酸態窒素、マンガン
[担当]兵庫農総セ・部長(農林水産環境担当)
[連絡先]電話0790-47-2420、電子メ−ルKousuke Nagai@pref.hyogo.jp
[区分]近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 蒸気処理、蒸気散水処理(蒸気処理後20L/m2散水)は農薬を使わない有効な土壌消毒法として注目されている。しかしながら、それらの処理が土壌の化学性に及ぼす影響については不明な点が多い。そこで、処理直後における土壌の化学性並びにその後の変化について養分の集積したハウス軟弱野菜の現地ほ場で検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 蒸気処理で上層部(深さ0〜15cm)の地温は95℃以上になる。蒸気処理後に散水することにより、上層部の地温が無散水区に比べて低下する。それに伴い下層部(深さ15〜30cm)の地温を若干高めることができる(図1)。
  2. 硝酸態窒素は蒸気処理のみでは、処理直後の変化が比較的少なく、その後の2ヶ月間も処理前とほぼ同じ量で推移する。蒸気散水処理の場合には、処理直後に上層部では処理前の約1/5に減少し、下層部では逆に処理前よりも硝酸態窒素が増加する。その後、腐植含量の高い土壌では、上層部において2週間後には処理前の約1/2、3週間後には約4/5の量までそれぞれ増加する。処理後における土壌中の硝酸態窒素の継時的変化については上層部と下層部で増減が相反する関係にある(図2)。
  3. 上層部において、蒸気散水処理は蒸気処理に比べて、塩素イオンが大きく減少する。 上層部の塩素イオン濃度は処理3週間後で、処理前の約4/5の量まで増加する。塩素イオンは硝酸態窒素に比べて増加の速度が遅い(図2)。
  4. 上層部の土壌において、交換性マンガンは蒸気、蒸気散水処理の直後に著しく増加する。その後、交換性マンガンは減少する傾向にあり、腐植含量の高い土壌では約2ヶ月後に処理前とほぼ同じ量になる(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 腐植含量が9.8%、CECが19.6me/100gで、アニオン類及びカチオン類が集積した土壌(中粗粒灰色低地土、土性:壌土)で実施している。
  2. 腐植含量が高い土壌では、蒸気散水処理で減少した作土層の硝酸態窒素の回復が比較的早いので、処理後の栽培において窒素施肥量を増やす必要はない。
  3. 蒸気処理後のチンゲンサイ栽培において、マンガン過剰症は認められていないが、腐植含量が少ない別の土壌では、処理後のコナツナ栽培で過剰障害が発生している。
  4. マンガン過剰症が懸念される土壌では、交換性マンガンが低下してから作付けする。

[具体的データ]



[その他]
研究課題名クリ−ンエネルギ−を利用した野菜の生産安定技術
予算区分国庫助成
研究期間2001〜2005年度
研究担当者永井耕介、竹川昌宏、牧 浩之、小河 甲

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