[成果情報名]

不耕起栽培継続田への堆肥連用は冬作牧草作付け期間中のリン溶脱を増大させる

[要約] 飼料用水稲と牧草の輪作を行っている不耕起栽培継続田に牛糞堆肥を連用すると、土壌表層に蓄積した有機物層中で可給態リン酸及び水溶性リン含量が堆肥施用量に比例して増大するため、非潅がい期間におけるリン溶脱が増大する。
[キーワード]不耕起栽培、牛糞堆肥、リン、溶脱、耕起
[担当]岡山農総セ・農業試験場・化学研究室
[連絡先]電話0869-55-0532、電子メールmasaya_ooya@pref.okayama.jp
[区分]近畿中四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 堆肥連用によって、堆肥中肥料成分が溶脱して環境に負荷を与える可能性が指摘されている。不耕起田では施用された堆肥が土壌表層に蓄積するため、堆肥連用によって多量の肥料成分が表層に蓄積する。そこで、不耕起継続田への堆肥の長期連用がリン溶脱に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 不耕起栽培継続田に牛糞堆肥を連用すると地表面に堆肥等有機物が蓄積し、土壌表層(0〜3cm)中の全炭素及び可給態リン酸含量が増大する。その傾向は堆肥施用量が多いほど著しい(図1)。可給態リン酸(Truog法)含量の増大に伴い、水溶性リン酸含量も比例的に増大する。その程度は堆肥施用量が多いほど著しい(図2)。
  2. Pampolinoら(2000)の方法に準じてイタリアンライグラス作付け期間中に、イオン交換樹脂を内有する直径2.2cmの球形カプセル(PST-1、UNIBEST,Inc.)を地表下50cmに設置する。2,3週間ごとに取り出し、その間に吸着される無機態リン量をモリブデンブルー法により測定する。
  3. 堆肥施用量が多いほどカプセルに吸着される無機態リン量は多く、期間降雨量が多いほどリン吸着量も増大する傾向にあることから、リン吸着量をもとに水の縦浸透に伴うリン溶脱程度を評価できる(図3)。化学肥料を用いた施肥体系では水溶性リン酸が主体の過リン酸石灰が施用されるにも関わらず、カプセルに吸着されるリン量は少ない(図3)ことから、土壌表層の有機物含量がリン溶脱に及ぼす影響は大きい。
  4. 耕起処理(7作目飼料稲作前)は土壌表層中の可給態リン酸含量並びにイタリアンライグラス作付け期間中のリン溶脱を減少させる(図4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 不耕起継続田における堆肥還元容量設定時の基礎資料とする.
  2. 耕起を行うことで堆肥連用に伴うリン溶脱を軽減できる。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名中山間における畜産との連携を想定した省力・環境負荷軽減型水稲栽培体系の確立
予算区分地域基幹農業技術体系化促進研究
研究期間1999〜2003年度
研究担当者大家理哉、山本章吾
発表論文等日本土壌肥料学会関西支部大会講演要旨集(2002)

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