[成果情報名]

カドミウムから見た汚染ほ場で栽培したアブラナ科葉菜類の安全性

[要約] アブラナ科葉菜類は生育が進むほどカドミウム含有率が低下する。また、結球部の含有率は外葉よりはるかに低い。栽培期間が長い大型結球野菜では、汚染ほ場でもアルカリ資材の適切な施用により可食部の含有率を0.2 mg kg−1以下にすることが容易である。
[キーワード]カドミウム、汚染ほ場、アブラナ科葉菜類、吸収抑制、アルカリ資材
[担当]兵庫農総セ・部長(農林水産環境担当)
[連絡先]電話0790-47-2420、電子メールTakeo_Kuwana@pref.hyogo.jp
[区分]近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
 兵庫県の主要野菜であるアブラナ科葉菜類は、主に水稲と組み合わされた生産体系の中で、水田において栽培されている。今日まで、野菜中のカドミウム濃度は問題にされなかった。しかし近年、食品中のカドミウムの濃度規制が厳しくなりつつあり、新しい国際的な基準値 (葉菜類の場合、新規にコーデックス委員会が0.2 mg kg−1を検討中) が設定されようとしている。そこで、アブラナ科露地野菜(キャベツ、ハクサイ、チンゲンサイ)のカドミウム濃度の安全性を再確認すると同時に、食品としての安全性をより高めるために、カドミウム吸収抑制技術をほ場レベルで実証する。

[成果の内容・特徴]

  1. 鉱山由来の現地汚染沖積水田(礫質灰色低地土、作土中カドミウム濃度は1/10モル塩酸抽出法で約4 mg kg−1乾土)において、水稲「コシヒカリ」栽培後に、アルカリ資材として苦土石灰及び多孔質ケイ酸カルシウム(オートクレーブ処理軽量気泡コンクリート、以下ALCと略す)を施用してアブラナ科葉菜類(2000年度:キャベツ「味春」、2001年度:ハクサイ「ほまれ」、2002年度:チンゲンサイ「青武」)を栽培し、カドミウム吸収を検討した結果は以下のとおりである。
  2. 野菜苗植え付け時にアルカリ資材を施用することにより、土壌pHの上昇に伴い、キャベツ、ハクサイ及びチンゲンサイのカドミウム吸収は抑制される。土壌pHを6.5以上に管理して栽培すれば、キャベツ、ハクサイのカドミウム含有率は 0.2 mg kg−1以下をクリアできる(図1)。しかし、高pHによる生育障害も認められ、キャベツでは著しく収量が低下する(図2)。
  3. キャベツの外葉部には結球部よりはるかに多く(含有率で結球部の5〜8倍、吸収量で3〜12倍)のカドミウムが存在する。ハクサイ外葉部のカドミウム含有率は結球部の 3〜4倍、吸収量は結球部とほぼ同じくらいである。収穫残渣である外葉をほ場外へ持ち出すことは土壌中のカドミウム量の低下に寄与する(図3)。
  4. 苗の定植から収穫までの、ほ場における栽培日数が長くなるほどカドミウム含有率が低下する傾向が認められる。栽培日数が80日以上となるキャベツやハクサイは、ALC等アルカリ資材を適切に施用することにより、容易にカドミウム含有率を0.2 mg kg−1以下に低下させることができる。一方、栽培期間の短いチンゲンサイではカドミウム含有率が高くなりやすい(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本成果は、水稲作後のアブラナ科露地野菜作に対して適用できる。
  2. 本成果から、カドミウム汚染土壌においても作物種を工夫することにより、安全な農作物の持続的な栽培が可能になることが示唆される。
  3. 土壌の高pHに対する作物の耐性を検討して、各作物ごとにアルカリ資材の施用技術を検討する必要がある。
  4. 作物生育に優しく、土壌pHを高い水準に長期間維持できるアルカリ資材の検索、開発が望まれる。

[具体的データ]



[その他]
研究課題名農用地土壌から農作物へのカドミウム吸収抑制技術等の開発に関する研究
予算区分行政対応特別研究
研究期間2000〜2002年度
研究担当者桑名健夫、清水克彦、吉倉惇一郎、桐村義孝、津高寿和、渡辺和彦
発表論文等桑名ら(2003)日本土壌肥料学会関西支部講演会要旨集:6

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