[成果情報名]

大豆品種「サチユタカ」の高品質安定生産のための播種期、栽植密度

[要約] 「サチユタカ」の播種適期は平坦部では6月中旬~7月上旬、山間部では6月上~下旬である。適正栽植密度は6月播では15~20本/m2であるが、7月上旬以降の晩播では短茎化し着莢位置が低くなるので、着莢位置を高めるため20~25本/m2の密植にする。
[キーワード]ダイズ、サチユタカ、播種適期、栽植密度、晩播、密植、着莢位置
[担当]山口県農業試験場・栽培技術部・作物栽培グループ
[連絡先] 083-927-0211、ikejiri.akihiko@pref.yamaguchi.lg.jp
[区分] 近畿中国四国農業・作物生産(夏作)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 山口県では、2000年に「サチユタカ」を奨励品種に採用し、生産拡大と県産大豆の地産地消運動を進めており、高品質な大豆の安定生産、安定供給が強く望まれている。しかし、現地では、莢先熟の発生、カメムシ被害や裂皮等による品質低下、播種が遅れた場合の短茎化によるコンバイン収穫による刈り残し(収穫ロス)が問題となっている。そこで、「サチユタカ」の収量、品質が高位安定化する最適な播種期と栽植密度を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 収量は、莢数が確保しやすく、カメムシ等による屑粒の少ない6月中旬~7月上旬播 (平坦部)、6月上旬~下旬播(山間部)で多い(表1表3)。平坦部、山間部とも に、播種期に関わりなく栽植密度10本/m2では莢数が確保しにくく、15本/m2以上で多 収となる(表2)。しかし、6月播での20本/m2を超える密植は、過繁茂になりやすく、 増収効果が小さいので避ける。
  2. 外観品質は、平坦部では、裂皮粒及び虫害粒の発生が少なく、粒揃いが良い6月中旬 ~7月上旬播で優れる。山間部では、紫斑粒の発生が少ない6月上旬~下旬播で優れる (表1)。山間部、平坦部とも外観品質に対する栽植密度の影響はみられない(表2)。
  3. 7月上旬以降の播種では短茎化し、着莢位置も低くなるのでコンバインの収穫ロスが 生じやすくなる。しかし、栽植密度を20~25本/m2の密植とすることにより主茎長が長 くなり、着莢位置が高まる(図1)。
  4. 倒伏の発生は、播種期、栽植密度に関わりなく少ない(表2)。また、莢先熟の発生 は6月中旬~7月上旬播で少ない(表1)。
  5. 子実成分の変動は、6月上旬~7月上旬までの播種で小さいが、7月中旬播では粗タ ンパク質含有率が高く、粗脂肪含有率が低くなる(表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 「サチユタカ」はSMV、PSV等のウイルスにやや弱いため、極端な早播を避ける。
  2. 「サチユタカ」は莢数が少ない品種なので、カメムシ類の防除を徹底するとともに開 花期の灌水等により着莢率の向上を図る。
  3. 本成果は、中耕培土を行った栽培での結果である。密植の場合、無培土では倒伏が問 題となるので確実に中耕培土を行う。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名「サチユタカ」の高品質、安定栽培技術の確立
予算区分県単、ブラニチ2系
研究期間2000~2004
研究担当者 池尻明彦・岡本賢一・中司祐典・吉永巧・中山暁子・小林行高・金子和彦・岩本哲弥・村山英樹
発表論文等 1)中山ら(2002)山口農試研報53:21-29
2)池尻ら(2003)日作紀72別2:136-137

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