[成果情報名]

日本シバ裁断茎の機械吹き付けによる畦畔・法面の省力管理技術

[要約] 日本シバは裁断茎を機械吹き付け植栽すると、1年後の被度は約70%、2年後にはセンチピードグラスの種子吹き付けと同程度の80%の被度となる。草刈時の刈草量は少なく、管理の省力化につながる。
[キーワード] 緑化植物、日本シバ、在来種、裁断茎、機械吹き付け植栽、雑草抑制
[担当] 兵庫農総セ・北部・農業部
[連絡先] 079-674-1230、akira_fukushima01@pref.hyogo.jp
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(畦畔)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 基盤整備では、畦畔・法面は成型だけで緑化されることはなく、雑草で覆われるまで放置される。この畦畔・法面には、外来雑草等が侵入し、景観面からも環境保全の面からも問題が多い。さらに、「景観法」や「特定外来生物による生態系等に係る被害防止に関する法律」の施行に伴い、自然保護や生物多様性保全の観点から安易な外来種での緑化は問題視されており、在来種の活用による緑化が模索されている。そこで、管理が困難な大規模畦畔・法面を想定して、在来種である日本シバを省力的な機械施工法により導入し、被覆の推移と雑草の侵入量について検討する。
[ 成果の内容・特徴 ]
  1. 日本シバの裁断茎(植栽面積に対し10%の苗シバ)を車に搭載したタンク内でバーク堆肥を主とした生育基盤材、高度化成肥料などとともに撹拌して、造成直後の畦畔・法面に圧縮空気により吹き付け植栽する。植栽単価は1,200円/m2程度である。
  2. 初期の被覆は緩慢であるが、1年後には張り芝に近い70〜80%の被度となる。さらに、2年後にはセンチピードグラスの種子吹き付けと同程度の80〜90%の被度となる。その後、日本シバの衰退はなく一定の被覆を維持する(図1)。
  3. 管理作業(年1回刈払い)に要する時間は、日本シバ裁断茎吹き付け植栽では、センチピードグラス及び洋シバ3種類種子吹き付けに比べ短縮され、刈草量も少ない(表1)。
  4. 雑草の発生量は、植栽翌年までは多いが、シバの被度が高まる2年後以降は減少し、その後は少なく推移する(図2)。
  5. 春季の植栽におけるイタリアンライグラスの混植は、日本シバ被覆までの裸地状態の補完効果が期待できる(図1)。夏にイタリアンライグラスが枯死しない場合はシバを優占化させるため刈り払う。
[成果の活用面・留意点]
  1. 日本シバ種子(ノシバ系種類)の発芽率は極めて低く、種子吹き付けによる植栽は困難であり、広い面積への植栽での裁断茎吹き付け植栽の実用性が高い。
  2. 在来種である日本シバは、地域生態系の維持保全機能が期待でき、さらに農村景観の向上効果もある。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名 景観・ビオトープに配慮したため池、畦畔の管理方法の評価と実証
予算区分 県単
研究期間 2000〜2005年度
研究担当者 福嶋昭、大村武史(株式会社ジェイツー・現日本農薬株式会社)、出雲井雄二郎(株式会社大本組)、吉田修(吉田建設株式会社)
発表論文等 大村・福嶋・出雲井・吉田(2002)、特願2002-172668

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