[成果情報名]

カンキツキメラ個体の茎頂の倍数性推定と三倍体育種への活用

[要約]カンキツ茎頂のコルヒチン処理で得られた二倍性と四倍性のキメラ個体のうち、組織の倍数性調査により茎頂分裂組織の第二層が四倍性であると推定した個体は、完全な四倍体と同様に三倍体育成の交配親として活用できる。
[キーワード]カンキツ、キメラ、茎頂、倍数性、三倍体育種
[担当]広島農技セ・生物工学研究部
[連絡先]電話番号 082-429-0527、電子メール ngcseibutsu@pref.hiroshima.jp
[区分]近畿中国四国農業・生物工学
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 カンキツ類では無核性品種の育成手法として三倍体の活用が有効である。茎頂のコルヒチン処理では、四倍体と共に二倍性(2x)と四倍性(4x)細胞を併せ持つキメラ個体(以下「キメラ個体」という)が多く出現すると同時に、四倍体作出の困難な品種がある。そのため、これらのキメラ個体を育種に活用することを試みる。そこで、キメラ個体のうち、葉の四倍性細胞割合が高く、かつ葉脈が四倍性細胞のみで構成されている個体を用いて、フローサイトメトリーにより組織別の倍数性を調査する。また、交配親として三倍体作出の可能性を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. コルヒチン処理で得られたキメラでは,葉の四倍性細胞割合が63.0〜83.9%の個体が全体の76.5%と最も多く,これらの個体の葉脈は四倍性細胞から構成されている(表1)。
  2. 用いる‘不知火’、‘安芸タンゴール’、‘農間紅八朔’、‘安政柑’のキメラ4個体の葉脈およびフラベドとアルベドは、四倍性の細胞のみで構成されており、茎頂の第2層と第3層が、四倍性と推定できる(表2)。
  3. キメラ個体の花粉稔性は二倍体に比較してやや低いが、花粉量は同等なので花粉親として利用できる。また、花粉の栄養細胞,生殖細胞の倍数性は、四倍体(表3参考個体)と同様に、二倍性(栄養細胞と推定)と四倍性(生殖細胞と推定)が検出される。花粉は、茎頂の第2層から分化することから、茎頂の第2層が四倍性と推定できる(表3)。
  4. キメラ個体を種子親に二倍体を交配した場合は、発芽した全ての個体が三倍体となる。また、キメラ個体を花粉親として二倍体を交配した場合は、不完全種子から発芽した個体がすべて三倍体となる(表4)。
  5. 以上の結果、キメラ個体は、葉、果実、あるいは花粉の細胞の倍数性調査により、茎頂分裂組織の第2層が四倍性であると推定した個体は、完全な四倍体と同様に三倍体育成の交配親として活用が可能で、三倍体育種を効率化できる。
[成果の活用面・留意点]
 キメラ個体は、生育中にキメラ構造が変化する可能性があるため、定期的に茎頂の第2層の倍数性が判断できる組織(葉脈、フラベド+アルベド、花粉など)の倍数性を確認し、育種素材として活用する。なお、キメラ個体は、倍数性を確認した枝から採穂し、接ぎ木により増殖する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名産地活性化を狙った県独自性の高いカンキツ類の新品種育成
予算区分県単
研究期間1998-2005年度
研究担当者古田貴音、金好純子、蔵尾公紀

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