[成果情報名]

水稲「イクヒカリ」の奨励品種採用

[要約]「イクヒカリ」は「キヌヒカリ」と同程度の熟期で外観品質が良く、良食味である。そこで「キヌヒカリ」の品質低下が問題となっている地域における代替品種として「イクヒカリ」を奨励品種に採用する。
[キーワード]イネ、奨励品種、外観品質、良食味、イクヒカリ
[担当]和歌山農林水技セ・農試・栽培部
[連絡先]電話番号 0736−64−2300、電子メール kakiuti_j0001@pref.wakayama.lg.jp
[区分]近畿中国四国農業・作物生産(夏作)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 本県の主要品種「キヌヒカリ」は県北中部を中心に広く栽培され、県内水稲作付面積の50%以上を占める。しかし近年、作期の前進化等により登熟期が高温期に当たる等の原因から、外観品質の低下が問題となっている。また、消費者からは良食味米が求められる。
 そこで、白未熟粒が発生しにくく良食味の品種で、和歌山県に適応する品種を検討し、「イクヒカリ」を選定した。この結果を基に「イクヒカリ」を奨励品種に採用し、普及することで、県内極早生品種の高品質・良食味米の安定生産を図る。
[成果の内容・特徴]
「イクヒカリ」は「キヌヒカリ」と比べて次のような特徴を持つ。
  1. 出穂期は-2〜+1日、成熟期は-2〜±0日でほぼ同等である(表1)。
  2. 稈長は並かやや短く、穂長はやや長く、穂数は同程度である。草型は中間型に属する(表1)。
  3. 千粒重が重く、収量はやや多い(表1)。
  4. 耐倒伏性は同程度で強い(表1)。
  5. 心白粒の発生が少なく、外観品質が優れる(表2)。
  6. 白米中のタンパク質含量はやや少なく、食味は粘りがあり同等以上である(表2,表3)。
  7. 粘りが強く、食味は同等以上である(表3)。
  8. 現地試験においても出穂期-3〜+2日、成熟期-4〜+5日でほぼ同等。稈長、穂長は同等からやや長く、穂数はやや多い。千粒重は重く、収量は同等からやや多い。外観品質は同等かやや優れる(表4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 「イクヒカリ」の適地は県内全域の平坦地〜中山間地と考えられるが、特に「キヌヒカリ」の外観品質低下が問題となっている県北中部の平坦地での普及を図る。
  2. いもち病、白葉枯病に対する抵抗性は中程度であるので、薬剤の育苗箱施用などの防除を行う。
  3. 出穂期までは葉色がやや淡く経過するので、追肥時期および量に注意する。倒伏には強いが、良質米生産上、多肥栽培はしない。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名温暖化に対応した水稲食味向上技術
予算区分県単
研究期間1999〜2005年度
研究担当者垣内 仁、森本哲矢、宮本芳城、川村和史、浅井良裕

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