[成果情報名]

昆虫病原性糸状菌製剤への薬剤混用による防除効果安定化技術

[要約]昆虫病原性糸状菌製剤への薬剤混用は、トマトのシルバーリーフコナジラミに対してはP.f.菌製剤と脂肪酸グリセリド乳剤で、イチゴのワタアブラムシに対してはV.l.菌製剤とソルビタン脂肪酸エステル(機能性展着剤)で防除効果が向上する。
[キーワード]昆虫病原性糸状菌、薬剤混用、トマト、イチゴ、野菜
[担当]山口農試・病害虫部・虫害管理グループ
[連絡先]電話番号 083-927-0211、電子メール kawamura.toshikazu@pref.yamaguchi.lg.jp
[区分]近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 昆虫病原性糸状菌による害虫防除では、好適な温度・湿度条件で使用することが高い防除効果を安定的に得るうえで必要条件といえる。しかし、農家ほ場においては必ずしも好適な条件が得られず、防除効果が不安定になる場合がある。このため、付着率向上などによるPaecilomyces fumosoroseus菌製剤及びVerticillium lecanii菌製剤の防除効果の安定化を目的とし、薬剤の混用効果を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. Paecilomyces fumosoroseus菌製剤(1000倍)のシルバーリーフコナジラミに対する防除効果は、脂肪酸グリセリド乳剤(300倍)、ソルビタン脂肪酸エステル(機能性展着剤、1000倍)、マシン油乳剤98%(150倍)を混用散布することにより向上し、その程度は脂肪酸グリセリド乳剤で最も高い(図1)。
  2. Verticillium lecanii菌製剤(1000倍)のワタアブラムシに対する防除効果は、脂肪酸グリセリド乳剤(300倍)、ソルビタン脂肪酸エステル(機能性展着剤、1000倍)、マシン油乳剤98%(150倍)、なたね油乳剤(200倍)を混用散布することにより向上し、その程度はソルビタン脂肪酸エステルで最も高い(図3)。
  3. 薬剤混用による薬害は発生しない。
[成果の活用面・留意点]
  1. 防除効果の向上は、混用する剤そのものの物理的防除効果によるところもあるが(図1)、昆虫病原性糸状菌の付着率を向上させることもあって得られるものと推測される(野外における昆虫病原性糸状菌Nomuraea rileyiのハスモンヨトウに対する殺虫効果、杉田ら、関病虫研報45、2003を参照。)
  2. 薬剤の混用は、昆虫病原性糸状菌製剤調製液を散布する直前に行う。
  3. 感染に必要な80%以上の湿度を確保するため、湿度が上昇する夕方以降に散布する。
  4. シルバーリーフコナジラミ、ワタアブラムシの少発生時から複数回散布する。
  5. いずれの薬剤も野菜類で農薬適用がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名生物資材を活用した施設イチゴの病害虫防除技術の確立
予算区分国補(環境保全推進)
研究期間2002〜2005年度
研究担当者河村俊和、和泉勝憲、岩本哲弥、本田善之、東浦祥光

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