[成果情報名]

灰色低地土における土壌化学性分析値を用いたダイズ子実カドミウム濃度の推定法

[要約] ダイズ子実中カドミウム濃度は作土の0.01M塩酸抽出カドミウム濃度と相関が高い。さらに、説明変数としてリン酸吸収係数及び全炭素を加えた重回帰式を用いることで、より精度高くダイズ子実中カドミウム濃度推定が可能である。
[キーワード] カドミウム、ダイズ、子実、土壌、化学性、推定
[担当] 鳥取農試・環境研究室
[連絡先] 電話 0857-53-0721
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(土壌)
[分類] 技術及び行政・参考

[背景・ねらい]
 コーデックス委員会での農産物カドミウムに対する国際基準設定を受け、現在国内基準について検討されており、ダイズについても基準設定の方向で検討されている。
 カドミウム対策を進めるにあたって、あらかじめリスクの高いエリアを特定する必要がある。このため、土壌化学性データを用いたダイズ子実中カドミウム濃度の推定方法を確立する。
[成果の内容・特徴]
  1. ダイズ子実中カドミウム濃度は、作土の塩酸抽出カドミウム濃度との関係が認められ、従来土壌カドミウムの指標として用いられている0.1M-HCl抽出よりも、濃度の薄い0.01M-HCl抽出カドミウム濃度との相関が明らかに高い(図1)。
  2. この関係を基にして、ダイズ子実中カドミウム濃度(品種:サチユタカ)を目的変数、作土の化学性を説明変数として重回帰分析を行ったところ、下記の関係式(重相関係数0.914)が得られた(表1表2)。

    子実中カドミウム濃度 (サチユタカ)mg kg-1 =
        (0.01M-HCl抽出Cd mgkg-1)×2.02−(リン酸吸収係数mg/100g)×0.00022+(TC %)×0.037+0.168
  3. 上記関係式を未知データで検証したところ、推定誤差は比較的小さく(0.055)、土壌化学性分析値を用いて子実中カドミウム濃度の推定が可能である(図2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 安全なダイズ生産のために、カドミウム吸収抑制対策を実施する必要性の高い地域の特定に活用できる。
  2. 品種により土壌中カドミウム濃度との関係が異なるので、サチユタカ以外の品種を対象として濃度推定を行う場合には推定式の適合性確認が必要である。
  3. 関係式は灰色低地土ほ場のデータを用いて検討したものである。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 安心・安全・安定的な農産物生産のための土壌管理技術の確立
予算区分 受託((独)農業環境技術研究所)
研究期間 2003〜2007年度
研究担当者 宮田邦夫、稲坂恵美子、金川健祐

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