[成果情報名]

昆虫病原糸状菌3種の混用散布はBT剤と同等の防除効果がある

[要約] 昆虫病原糸状菌Paecilomyces fumosoroseus(SPf-1株)、Beauveria bassiana(MG-1株)、Nomuraea rileyi(SlNr-3株)の3種を各菌108分生子/ml濃度で混用し、7日間隔で散布すると、露地キャベツの主要チョウ目害虫に対して、BT剤と同等の高い防除効果がある。
[キーワード] 昆虫病原糸状菌、PaecilomycesBeauveriaNomuraea、アブラナ科野菜、チョウ目害虫
[担当] 滋賀農技セ・環境研究部・病害虫管理担当
[連絡先] 電話 0748-46-2500
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
 アブラナ科野菜など土地利用型作物における昆虫病原糸状菌を利用した防除体系を構築し、施設栽培と比較して遅れている露地栽培での環境負荷低減型防除技術を開発する。そこで、昆虫病原糸状菌であるPaecilomyces fumosoroseus(SPf-1)、Beauveria bassiana(MG-1)、Nomuraea rileyi(SlNr-3)の3種を混用散布し、露地キャベツの主要チョウ目害虫に対する防除効果を調べる。
[成果の内容・特徴]
  1. 露地の春作キャベツにおける3種混用(108分生子/ml、7日間隔)の防除効果は、モンシロチョウとウワバ類、コナガの各幼虫に対してBT剤(1,000倍、7日または14日間隔)と比較して同等に高い (図1)。
  2. 露地の秋作キャベツにおける3種混用(108分生子/ml、7日間隔)の防除効果は、モンシロチョウとウワバ類、ハスモンヨトウの各幼虫に対してBT剤(1,000倍、7日または14日間隔)と比較して同等に高い (図1)。
  3. 3種混用区(108分生子/ml、7日間隔)とBT区(1,000倍、7日または14日間隔)の食害程度は低く、可販株率は無処理区との間に有意な差(p<0.05)がある(図2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 供試した昆虫病原糸状菌の3種は、平成19年12月現在、農薬取締法に基づく農薬登録がされていないため、試験研究以外での使用はできない。
  2. 107分生子/ml濃度での3種混用散布やPaecilomyces fumosoroseus(SPf-1)、Beauveria bassiana(MG-1)、Nomuraea rileyi(SlNr-3)の107分生子/ml濃度での単用散布では、十分な防除効果を得ることができない。
  3. タバコガ類については発生が少なかったため効果は判然としなかったが、一定の効果はあると考えられる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 昆虫病原菌を基幹としたアブラナ科野菜害虫の防除体系の確立
予算区分 高度化事業
研究期間 2005〜2007年度
研究担当者 保積直史、川村容子、江波義成、増田俊雄(宮城県農業・園芸総合試験場)、 樋口俊男(出光興産)、廣森 創(静岡大学)、西東 力(同左)

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