[成果情報名]

ダイズ子実汚斑病(新称)の発生及び病徴と媒介カメムシ

[要約] ダイズ子実子葉部に黒色壊死を呈したカメムシ吸汁被害粒から子のう酵母を分離し、本菌が海外でダイズにyeast spot diseaseを起こす知見があるが、わが国では未記録であるEremothecium coryliと同定した。また、本菌の媒介カメムシの種類についても明らかにした。
[キーワード] ダイズ子実汚斑病、子のう酵母、Eremothecium coryli、カメムシ
[担当] 京都農総研・環境部
[連絡先] 電話 0771-22-6494
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
 種皮に裂皮を生じた黒大豆(品種:紫ずきん及び新丹波黒)の子葉断面には壊死を伴ったカメムシ吸汁痕を持つものがあり、子葉の壊死部からは糸状菌、細菌及び酵母類が分離される。分離微生物と子葉の壊死の関係を明らかにすることは、裂皮対策及びカメムシ被害解析をする上で重要と考えられる。そこで、これら分離微生物を同定すると共に、接種試験に供してダイズへの病原性の有無を確認する。
[成果の内容・特徴]
  1. 本菌は、PDA平板培地上に白色〜乳白色、軟質、滑らかでわずかに盛り上がり、外縁が細かい菌糸状のコロニーを形成し、多極性出芽により増殖する子のう酵母である(図1)。
  2. 培養的、形態的及び生化学的諸性質並びに5.8Sを含むITS領域の塩基配列解析の結果、本分離菌は、Eremothecium coryli (Peglion) Kurtzmanであると同定される。
  3. Daugherty(1967)の方法による刺針接種を行うと、種皮に茶から黒色の壊死斑及びその断面には壊死が認められ、病徴が再現される(図2)。
  4. 本菌によるダイズの病害は、海外でyeast spot diseaseとして知られるが、本邦では未記録であるので、ダイズ子実汚斑病(新称)(yeast spot disease)と命名し、日本植物病名目録(追録)に記載された。
  5. 本酵母は、ダイズの主要加害4種(ホソヘリカメムシ、アオクサカメムシ、イチモンジカメムシ及びブチヒゲカメムシ)によって媒介される(表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 我が国での詳細な発生は不明であるが、本菌は、京都府内の各黒大豆産地の子実サンプルから分離され、また、京都府内及び広島県(近中四農研)で採集されたカメムシ類からも分離されている。
  2. 本菌はカメムシ類による吸汁によってのみ媒介される(Daugherty, 1967)。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 黒大豆の発芽率向上及び微小裂皮防止に向けた紫斑病防除対策の確立
予算区分 国交付金
研究期間 2006〜2007年度
研究担当者 木村重光、久下一彦
発表論文等 1)木村(2007)日植病報 73:283-288
2)木村ら(2008)応動昆 52:13-18

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