[成果情報名]

クモヘリカメムシの匂い物質によるクモヘリカメムシの忌避効果

[要約] クモヘリカメムシは刺激を受けると匂いを発する。この物質からクモヘリカメムシ成虫に強い忌避行動を誘発する(E)-2-Octenal、(E)-2-Octenyl acetate、(Z)-3-Octenyl acetateを警報フェロモンと特定した。野外条件において(E)-2-Octenalを微量施用すると忌避行動を誘発できる。
[キーワード] クモヘリカメムシ、警報フェロモン、忌避行動
[担当] 兵庫農総セ・農技セ・病害虫防除部
[連絡先] 電話 0790-47-2448
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
 クモヘリカメムシは米の品質低下の主要因となる斑点米を引き起こす重要害虫である。現在の防除方法は畦畔等の草刈りの励行によるカメムシ生息密度の抑制と水稲出穂期〜乳熟期にかけての殺虫剤散布である。害虫の生態を利用した行動制御物質の特定に取り組み、新しい防除法に結びつける。
[成果の内容・特徴]
  1. クモヘリカメムシの匂いに反応し忌避行動を起こす個体率は20、25℃において100%、調査ケージからの脱出個体率は20、25℃において80%以上である(図1)。匂い物質によりクモヘリカメムシの行動を制御できる。
  2. クモヘリカメムシ匂い成分のガスクロマトグラフィによる分析を行い、これにもとづく候補物質の特定と忌避行動の再現生物試験から忌避行動を誘発する成分は(E)-2-Octenal、(E)-2-Octenyl acetate、(Z)-3-Octenyl acetateの3物質である。
  3. (E)-2-Octenal、(E)-2-Octenyl acetate、(Z)-3-Octenyl acetateの温度別忌避行動の発現個体率を調査すると3物質とも20℃以上で発現する個体率が高くなり、3物質とも25℃では80%以上の個体が忌避行動を起こす (図2)。クモヘリカメムシの警報フェロモンはこれらの物質で構成される。
  4. 3物質のうち市販されている(E)-2-Octenalを用いて、野外での忌避効果をみると、風、温度などの条件を全く制御しない野外で(E)-2-Octenal原体を微量処理することにより、高い忌避効果を認める(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、防除資材「クモヘリカメムシの忌避剤」として農薬登録が必要である。
  2. 20℃以下では有効な忌避行動の発現は無い。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 カメムシ類のフェロモン及び誘引物質の探索とその利用方法の開発
予算区分 県単
研究期間 2001〜2005年度
研究担当者 山下賢一、諫山真二(住友化学)、高林純示(京都大学) 

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