[成果情報名]

水耕ネギの発泡レンガ粒と樹脂製トレイを用いたトレイ栽培方式の開発

[要約] 発泡レンガ粒と樹脂製トレイを用いた水耕ネギのトレイ栽培方式は播種から収穫までをトレイごと栽培する。培地は次亜塩素酸での消毒により再使用できる。栽培ベッドの端のみで定植・収穫を行い、作業の奥行きを45cmとすることで身体的負担を軽減できる。
[キーワード] ネギ、水耕、トレイ、培地、再使用、作業性改善
[担当] 広島総研・農技セ・栽培技術研究部
[連絡先] 電話 082-429-3066
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 ネギの水耕栽培では、育苗用培地としてウレタンフォームやロックウールが使用されており、生産残さの環境への負荷が大きい。また、定植・収穫時には、上体を前屈させた姿勢での作業が続き、身体への負担が大きい。そこで、再使用可能な培地を利用し、さらに、定植・収穫時の作業姿勢の改善を図る栽培方式を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. トレイ栽培方式は、粒径4〜8mmの発泡レンガ粒(平成17年度近畿中国四国農業研究成果情報:283-284)を培地として樹脂製トレイ(平成18年度近畿中国四国農業研究成果情報:179-180)に入れて、播種から収穫までを一貫してトレイごと従来の栽培ベッドで栽培する(図1)。
  2. 播種は、トレイを水稲用育苗箱に置き、トレイ内に発泡レンガ粒を入れて散水した後、42から50粒播種し、発泡レンガ粒で覆土する。育苗時の給液方法は湛液方式とする。
  3. 定植は既存の定植パネルを長方形にくりぬき、トレイを挿し込んで行う。トレイ栽培方式では、通路を移動せず、定植時には栽培ベッドの端から定植パネルを押し込み、収穫時には栽培ベッドの端に定植パネルを引き寄せて、栽培ベッドの端のみで作業を行う。大きさ90cm×57.5cm×3cmの発泡スチロール製の既存の定植パネルを半分の45cm×57. 5cm×3cmに分割・加工して利用する。トレイ間隔は22.5cmとする。
  4. 収穫は、トレイごと行い、専用の作業台を用いて、ネギとトレイ・培地を分離する。トレイと培地は、次亜塩素酸(農業用資材の消毒に用いられる所定の有効塩素濃度700ppm)で消毒する。消毒していない培地を用いて栽培したネギでは、根の褐変が観察され、根から鞭毛菌類が検出されたが(データ省略)、消毒した培地を用いて栽培したネギでは、根の褐変は観察されず、最長葉長、生体重、茎径、規格品重量割合のいずれも慣行と同等である(表1図2)。
  5. 定植・収穫作業の奥行きは45cmとなり、上体を前屈させた作業姿勢を改善できる(図3)。部位別自覚症状は、トレイ栽培方式では、Borg Scaleの10点法の1点である「弱い痛み」よりも低く、慣行栽培に比べて身体的負担が軽減される(データ省略)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 収穫時にトレイから下に伸びた根を切断し、ネギとトレイ・培地を分離する専用の作業台が必要である。
  2. 既存のパネルで10枚(トレイ栽培方式のパネルでは半分に分割しているので20枚)あたり次亜塩素酸での消毒に100リットルの容器が必要である。
  3. 使用済み次亜塩素酸は、所定の方法に従って処理を行った後に廃棄する。
  4. 育苗面積が慣行に比べて4倍必要である。
  5. 10aあたりのウレタンフォーム培地費用35万円/年に対し、トレイ購入費用は14万円/年(5年間使用)である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 水耕ネギの培地廃棄量ゼロと省力・多収・低コスト化技術
予算区分 競争的研究資金(農林水産研究高度化事業)
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 越智資泰1、今井俊治1、橋本晃司2、横山詔常2、岡野 仁2、 中村幸司2、古川 昇3、阿部 亨4(1:広島総研・農技セ、2:広島総研・西工技セ、 3:広島総研・東工技セ、4:鰍qEC)
発表論文等 特開2005-198563「葉菜類の水耕栽培用容器およびこれを使用した葉菜類の水耕栽培方法」

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