[成果情報名]

辛味果実の発生しない大型甘トウガラシ新系統「TMBC5DH35」の育成

[要約] 辛味果実の発生が問題となっている大型甘トウガラシ「万願寺」を、ピーマン品種に連続戻し交配して育成した新系統「TMBC5DH35」は、辛味果実が全く発生せず、「京都万願寺1号」に比べて、果実の伸びがよく、アントシアニン着色果実の発生が極めて少ない。
[キーワード] トウガラシ、辛味果実、連続戻し交配育種、アントシアニン着色果実
[担当] 京都農資セ・応用研究部
[連絡先] 電話 0774-93-3525
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 京都府舞鶴地域特産の肉厚で大型の甘トウガラシ「万願寺」は、近年、関西圏を中心に需要が伸びている。しかし、時折、辛味の強い果実が発生することがあり、これまでに遺伝資源の中から系統選抜により辛味果実の発生の少ない品種「京都万願寺1号」を育成した。「京都万願寺1号」は、辛味果実がまれに発生し、低温時にアントシアニン着色果実の発生もやや多い等の特性が認められる。そこで、ピーマン品種との交配により、辛味果実の全く発生しない「万願寺」タイプのトウガラシ新系統を育成する。
[成果の内容・特徴]
  1. 本系統は、「万願寺」とピーマン品種「とんがり」(ナント種苗)の一代雑種に、「万願寺」を5回連続戻し交配した個体から葯培養により固定系統を作出し系統選抜したため、「万願寺」の風味や食感を持った固定系統である(図1)。
  2. 本系統は、辛味遺伝子に連鎖したDNAマーカーを用いて選抜を行い、ピーマンと同様に辛味遺伝子を劣性ホモ型にもつため、辛味果実が全く発生しない(表1)。
  3. 本系統は、「京都万願寺1号」では低温期に発生が認められるアントシアニン着色果実(規格外品)が極めて少ない(表2)。
  4. 本系統の果実形状は「京都万願寺1号」と類似しているが、草勢が低下しても果実の伸びがよく(図2)、「京都万願寺1号」と比べて上果(秀および優品)収量が高い(表2)。
  5. 本系統は、食味や外観等の果実品質は、「京都万願寺1号」や「万願寺」に比べ、同等以上である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 低温期にアントシアニン着色果実の発生が少ないため、露地や山間部での栽培にも適する。
  2. 辛味遺伝子の選抜に用いたDNAマーカーは、「京都万願寺1号」や「万願寺」との品種識別マーカーとして利用可能である。
  3. 本系統は、品種登録出願を予定しており、種子の供給は当面は京都府内に限る。他府県への種子供給の可否については検討中である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 辛味の発現しない万願寺とうがらし品種の育成と安定生産技術の開発
予算区分 委託プロ(ブラニチ6系)、府単
研究期間 2002〜2005年度、2006〜2007年度
研究担当者 南山泰宏、稲葉幸司、古谷規行

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