[成果情報名] | 前培養とnested-PCRによる潜在感染株からのイチゴ炭疽病菌の検出技術 |
[要約] | イチゴに潜在感染している炭疽病菌は、前培養とnested-PCRを組み合わせた検出法により4日間で検出することができ、選択培地による培養法よりも検出精度が優れている。 |
[キーワード] | イチゴ、炭疽病菌、PCR、検出 |
[担当] | 奈良農総セ・病害防除チーム |
[連絡先] | 電話 0744-22-6201 |
[区分] | 近畿中国四国農業・生産環境(病害虫) |
[分類] | 技術・参考 |
近年イチゴ炭疽病菌(完全世代:Glomerella cingulata,不完全世代:Colletotrichumgloeosporioides(以下Cgと略す))の発生が全国的に増加しており問題となっている。本菌の主要な第一次伝染源は潜在感染親株であるため、親株を検定し感染株を除去することが極めて有効な防除技術である。PCRは病原菌検出に有効な手法であるが、PCR阻害物質の多いイチゴから低密度の本菌を検出するのは困難である。そこで、前培養、DNA抽出条件を最適化し、イチゴに潜在感染した本菌のPCR検出技術を開発する。
1.イチゴ葉柄基部に潜在感染した炭疽病菌は、ショ糖加用ジャガイモ煎汁(PS)液体培地で28℃、2日間の培養により増加する(図1)。そのため、DNA抽出時の試料破砕が不要で、PCR阻害物質の混入を少なくできる。
2.イチゴ組織とイチゴ炭疽病菌体の混合試料からDNA抽出してPCR検出を行う場合、DNA抽出キットMag Extractor-plant genome-(東洋紡製)が適している(図2)。
3.潜在感染株の葉柄基部を試料として、前培養後のPCR法と従来法である改変Mathur培地(Freemanら,1997)を用いた培養法の検出精度を比較したところ、前培養後にnested-PCRを行った検出法が最も検出率が高くなる(図3)。
4.1〜3から設定したイチゴ炭疽菌検出プロトコールは、以下のとおりである。イチゴ外葉の葉柄基部切片を試料とし、80%エタノールで30秒間の表面殺菌後、PS液体培地0.3mlを入れたマイクロチューブで28℃、2日間静置培養を行なう。培養液をマイクロピペットで除去し、葉柄基部切片をMag Extractor-plant genome-を用いてDNAを抽出する。抽出液を鋳型にして1stPCR、さらにその反応液を鋳型にして2ndPCRを行い、1.5%アガロースゲルで電気泳動を行う(図4)。本法は、潜在感染株からのイチゴ炭疽病菌の検出が約4日間と短い。
1.採取部位には、感染頻度の高い外葉の葉柄基部が適している。
2.葉柄基部に付着している土壌は、表面殺菌前に水道水で洗い流しておく。汚染がひどい場合には、PS培地に50ppmストレプトマイシンを添加する。
3.前培養時、葉柄基部が培養液に浸漬しなくてもよいが、軽く振とうさせてサンプル全体を濡らしてから静置培養する。
4.検出用プライマーはイチゴ炭疽病菌特異的プライマーを用い、1stPCRにAP-N1、AP-N2、2ndPCRにAP-N1、AP-7Rとする。(鈴木ら、2008)。
5.奈良県では、原親苗圃場における親株検定に本検出技術を用いている。
[具体的データ]
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[その他] | ||
研究課題名 | : イチゴ炭疽病潜在感染と薬剤耐性菌の迅速同時診断技術の開発 | |
予算区分 | : 受託(新たな農林水産事業を推進する実用技術開発事業) | |
研究期間 | : 2006〜2008年度 | |
研究担当者 | : 平山喜彦、岡山健夫、鈴木 健(千葉農林総研セ)、西崎仁博、松谷幸子 |