[成果情報名]

蒸気等熱消毒による土壌の撥水性の発現と対策

[要約] 太陽熱や蒸気消毒後に土が水を強くはじき、野菜の発芽や生育を阻害する事例が施設軟弱野菜ほ場で 見られる。この現象は土壌が乾燥した状態での湿熱で高まり、蒸気等熱消毒時の土壌の含水率を15%程度に することで問題を回避できる。
[キーワード] 土壌の撥水性、蒸気消毒
[担当] 兵庫農総セ・環境・病害虫部
[連絡先] 電話0790-47-2420
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(土壌)
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 蒸気消毒等を機会に土壌が水をはじき、発芽や生育を阻害する現象が現地で指摘され、原因の解明と 対策技術の開発が求められている。そこで土壌管理と撥水性の関係を解明し、有効な対策技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 土壌の撥水性は水滴浸入時間法を改良した手法で評価できる。1mm以下に篩い分けた土壌に対し、 ビュレットを用い、8mmの高さから、31mg±0.93mgの水滴を滴下し、シャーレをかぶせて保湿し、水滴の 浸入時間を測定し、土壌の撥水性を評価する。
  2. 撥水性の指摘された2土壌(A、B)は、粘土の少なく、腐植がやや高い土壌で、A土壌は風乾土では 撥水性は認められず、B土壌の風乾土では水滴浸入時間は280秒(表1)。 B土壌の撥水性を深さ別に見ると30cm以下では撥水性が認められず(データ略)、有機質資材の 施用等の土壌管理により撥水性が現れるものと考えられる。
  3. 風乾土で撥水性の認められないA土壌の現地試験でも、蒸気消毒により、消毒程度が強いほど撥水性が 強く発現する(表2)。
  4. 乾熱器を用いた乾燥処理では、A土壌の風乾土を80〜120℃の範囲で5日間乾燥させても撥水性は 認められないが(データ略)、オートクレーブを用いた湿熱処理により撥水性が発現する。 B土壌の風乾土に湿熱処理を行うと、105℃程度で水滴浸入時間は10000秒を超え、極めて強い 撥水性を示す(図1)。いずれの土壌でも80℃以上の湿熱処理で撥水性は急激に高まり、 温度が高いほど撥水性強度が高い。これらのことから撥水性の発現には単なる乾燥よりも湿熱の 影響が大きい。
  5. オートクレーブによる湿熱処理時には土壌含水率が低くいほど撥水性は強く発現するが、A、Bいずれの 土壌でも約15%以上の含水率を保てば撥水性は問題の無い程度となる(図2)。 土壌Bの現地ほ場でも土壌調査ハンドブックの(半湿)を目安に管理することにより、 撥水性の発現を回避できる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 有機質資材を多用した砂質土壌で蒸気等熱消毒を行う場合に活用できる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 施設栽培土壌における蒸気消毒後の土壌撥水性改善対策
予算区分 県単
研究期間 2007〜2009年度
研究担当者 牧浩之

目次へ戻る