[成果情報名]

落営農法人の経営指標と新しい経営分析手法

[要約] 集落営農法人の経営指標を算出し、その特徴を明らかにした。また、経営指標を用いて集落営農法人の 経営状態を視覚化する手法を開発した。
[キーワード] 集落営農法人、経営指標、視覚化、フェイスマーク
[担当] 山口農総セ・経営技術研究室
[連絡先] 電話083-927-7014
[区分] 近畿中国四国農業・営農
[分類] 行政・普及

[背景・ねらい]
 集落営農法人の育成が加速的に進む中で、これら法人経営の早期安定化に向けて、経営指標等を活用した 経営管理指導が求められている。そこで、集落営農法人の財務諸表データをもとに経営管理に活用できる 経営指標を算出し、その特徴を明らかにするとともに、指標を使った経営状態の視覚化手法を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 山口県内42の集落営農法人の2008年度財務諸表を基に経営指標を算出し、その特徴を明らかにした (表1)。なお、指標の算出は、従事分量配当を労務費としてコスト計上した上で行った。
    (1)  安全性について、流動比率は経営年数7年以上で、短期の支払能力が低下している。 自己資本比率は総体的に高い傾向にある。また、固定長期適合率は経営年数とともに悪化しているが、 100%を下回っており、資本の調達、運用の適合性についても問題はない。
    (2)  収益性について、総資本経常利益率、売上高経常利益率は、経営年数4〜6年で低下しているが、 7年目以上では上昇している。一方、複合化による収益の増加等により、総資本回転率は経営年数とともに 上昇している。
    (3)  生産性に関する指標の多くは、経営年数4〜6年で上昇しているものの、7年目以上では低下 している。一方、労働分配率は経営年数とともに増加しており、人件費の割合が増加している。
    (4)  作付面積10a当たり構成員還元額は経営年数とともに多くなる傾向にある。
  2. 作成した経営指標を用いて、集落営農法人の経営状態を視覚化する新しい経営分析手法を開発した。 本手法は、集落営農法人の経営状態を特徴づける指標として、安全性については短期の支払能力を示す 「流動比率」と、資本構造の安定性を示す「自己資本比率」、収益性については、資本に対する経常利益の 割合を示す「総資本経常利益率」と、売上高に対する資本の効率性を示す「総資本回転率」、生産性 については「労働生産性」と土地生産性を示す「作付面積10a当たり付加価値」の計6つの指標を用いる (表2)。 次に、この6つの指標について、県下法人の代表値である中央値と、 目標値となる上位30%の平均値を用いて、それぞれ、a、b、cの3段階の区分を行い、安全性、 収益性、生産性の各項目ごとに、A=5ポイント、B=3ポイント、C=1ポイント、最高15ポイント として総合ポイントを計算するもので、分析結果が視覚的に伝わるよう「フェイスマーク」を用いて 表現できる(図1)。
  3. 本分析手法は、分析対象法人の経営概況調査と併用することで、経営展開の過程や発展上の課題を視覚的に 整理することができる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 指標値は2008年度データに基づくものである。
  2. 経営状態の視覚化手法についてはエクセルプログラム「山口県集落営農法人財務分析システム」を 作成しており、公開可能である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 集落営農組織の経営安定に向けた診断指標の策定
予算区分 単県
研究期間 2007〜2009年度
研究担当者 高橋一興、吉山英明、白石一剛(山口県岩国農林事務所)、斉藤昌彦(山口県岩国農林事務所)

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