[成果情報名]

食味が良いイチゴの新品種「古都華」(ことか)の育成

[要約] イチゴの促成栽培用の新品種「古都華」は、「アスカルビー」と比較して収量が少ないが、15g以上の 正常果の収量は同等以上であり、果実の糖度、酸度および硬度は収穫期間を通して高く、直売等の直接取引に 適する。
[キーワード] イチゴ、品種、促成栽培、直売、良食味
[担当] 奈良農総セ・研究開発部・生産技術担当・野菜栽培チーム
[連絡先] 電話0744-22-6201
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 奈良県を含む近畿のイチゴ産地では、都市近郊産地あるいは消費地内産地という立地条件を活かし、 市場流通の他に、直売が盛んに行われている。一般の市場流通と異なり、直売においては、顧客が魅力を感じる 良好な食味が品種特性として特に求められる。そこで、良食味性を備え、「アスカルビー」と同程度の大果性を 有する品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
  1. 「古都華」は、奈良農総センター育成の「7-3-1」を子房親、「紅ほっぺ」を花粉親として育成された 品種である(図1図2)。「7-3-1」は「さちのか」を子房親、 「1-7-9」を花粉親、「1-7-9」は「アスカウェイブ」を子房親、「女峰」を花粉親とする系統である。
  2. 花芽分化期は「アスカルビー」より3日程度早い。促成栽培作型における開花期は「アスカルビー」より 2〜3日早く、「章姫」より5日程度遅い。
  3. 促成栽培作型における総収量は、「アスカルビー」と比較して80〜95%、「章姫」と比較して65〜80%と 少ないが、15g以上の正常果の収量は「アスカルビー」と比較して同等以上であり、乱形果率が他の 品種と比較して特に小さい(表1)。
  4. 果実の糖度、酸度および硬度は収穫期間を通して高い(図3)。
  5. 促成栽培作型における草高と草丈は、12月は「アスカルビー」並びに「章姫」と同程度であるが、厳寒期の 2月には「アスカルビー」と比較して有意に大きい(データ略)。
  6. 花房は長く、伸長促進のためのジベレリン処理は必要としない(データ略)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 食味が良好であることを生産者の販売価格に反映できる消費者、販売店、飲食店等との直接取引に適する。
  2. おがくずを培地とする雨除け下のベンチ無仮植育苗ではランナーと子苗の発生がやや少ない。
  3. 萎黄病、うどんこ病および炭疽病のいずれに対しても罹病性である。
  4. 二酸化炭素施用により20%近い増収が見込まれる。
  5. 県外における種苗の利用許諾時期は未定である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 奈良イチゴブランドパワー強化のための新品種育成
予算区分 県単
研究期間 1988〜2009年度
研究担当者 西本登志、信岡 尚、前川寛之、後藤公美、東井君枝、泰松恒男、木矢博之、吉村あみ、平山喜彦、 峯岸正好、佐野太郎、米田祥二
発表論文等 奈良県 品種登録出願23914(出願公表日:2009年9月24日)

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