[成果情報名]

早生、多収、大果、高糖度なイチゴ新品種「C19」

[要約] 「C19」は「さがほのか」と「紅ほっぺ」の交配実生から選抜・育成した促成栽培向けの新品種であり、 収穫開始が「さちのか」に比べ10日以上早く、総収量が多い。平均果実重が24gと非常に大きく、糖度(Brix)は 「紅ほっぺ」よりも高い。
[キーワード] イチゴ、新品種、促成栽培、早生、多収、大果
[担当] 和歌山農総セ・農試・栽培部
[連絡先] 電話0736-64-2300
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 和歌山県のイチゴ主要品種「さちのか」は果実品質に優れ市場評価が高いものの、収穫開始が12月下旬 と遅く、収量も少ないため、必ずしも収益のあがる品種とはいえない。また、小さい果実が多いことから、 摘果やパック詰め作業にも時間がかかる。そこで、「さちのか」に比べて、早生、大果で収量が多く、 果実品質も良い品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
  1. 「C19」は2003年に「さがほのか」を子房親、「紅ほっぺ」を花粉親として交配し、その実生から選抜、 育成した一季成り性の促成栽培向き品種である。
  2. 草姿は立性で、収穫期の草高は30cmを超え、「紅ほっぺ」と同等で高い。小葉は「さがほのか」に似て やや丸く、「さがほのか」、「紅ほっぺ」よりも大きい(図1表1)。
  3. ポット育苗における頂果房の花芽分化時期は9月13〜15日、開花時期は10月下旬、収穫開始時期は12月10日頃で あり、「さちのか」よりも10日以上早い。頂果房の花数は7.2花と「さがほのか」、「紅ほっぺ」よりも 少ない(表1)。
  4. 収量は「紅ほっぺ」、「さがほのか」に比べて、着果数が少ないため、年内収量および1月までの早期収量が やや少ないものの、連続出蕾性があり、低温期でも草勢が強いため、4月までの総収量が優れる (表2)。
  5. 果色は鮮赤色で、果形は円錐形で丸みを帯びており、ボリューム感があり、「さがほのか」に似る(図1)。 乱形果や奇形果の発生が少ないため、上物率が90%以上と非常に高く、果形の揃いが良い。果実の平均一 果重は24.1gと非常に大きく、果房の第1果は3L〜4Lになるとともに、S以下の果実は少ない(表2)。 果皮は、「さちのか」より弱く、「さがほのか」と同等、「紅ほっぺ」より強い。
  6. 糖度(Brix)は時期による変動がみられるが、10以上となる時期が多く、「さがほのか」、「紅ほっぺ」 よりも高い。酸度(クエン酸換算値)は「さがほのか」より高く、「紅ほっぺ」よりも低い(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 炭疽病は「さちのか」と同程度に弱く、うどんこ病は「さちのか」よりも弱いため、防除対策を 徹底する。
  2. 心止まり株が発生するため、育苗後半から定植後初期の極端な窒素切れを避ける。栽培条件により、 がく枯れ果が発生するので、潅水や温度管理、肥培管理を適正に行う。
  3. 低温期には葉裏の果実で着色不良果が発生しやすいので、玉出しと葉除けを行う。また、春先には 果実の裂皮が発生するので、ハウスの昇温防止に努める。
  4. 草勢が非常に強いので草高が高くなりすぎないように注意する。和歌山県の平坦部では低温期でも ジベレリン処理や電照は不要である。
  5. 本品種は現在、種苗登録申請中であり、今後の他府県への許諾については未定である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 果菜類の産地レベルアップ技術開発
予算区分 県単
研究期間 2002〜2008年度
研究担当者 西森裕夫、田中寿弥、東卓弥
発表論文等 品種登録申請:2009年3月19日(出願番号:第23578号)

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