[成果情報名]

イチゴ高設栽培におけるマルチ植穴からの冷気噴出による局所冷却法

[要約] イチゴ高設栽培においてマルチ植穴から冷気を噴出させる局所冷却法は、ハウス全体を冷却する方法に比べて 培地、クラウン、株周辺を効率的に冷却できる。この方法で夏秋イチゴの夜冷栽培を行うと、収量、商品果率が 向上する。
[キーワード] イチゴ、局所冷却、サマールビー、クラウン
[担当] 岡山農総セ・農試・北部支場・中山間農業研究室
[連絡先] 電話0868-57-2758
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 イチゴは夏でも業務用を中心として一定の需要があるが、夏季の高温の影響により収量が低く、栽培は 標高の高い一部地域に限られている。そこで、夏秋期に安定した収量を得るために、培地、クラウン部及び 株周辺を効率的に冷却する技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 本方法は、岡山農試式高設栽培「はればれプラント」のマルチの裾を地中に埋め込んで中にダクトを通し、 唯一の開口部である植穴から冷気を緩やかに噴出させてクラウン部を中心とした局所を冷却する 方法である(図1)。
  2. この方法でダイキン工業製の送風式クーラーを用い、ハウス中央の高さ1.2mの部分の冷却目標温度を 15℃に設定し(図1)、夜間(20〜6時)のみ冷却して 夏秋イチゴを栽培すると、8月の夜冷中の株周辺平均温度は無冷却より約5℃低くなる。 また、局所冷却の160%の能力を有するクーラーを用いて頭上から冷気を吹き下ろしてハウス全体を 冷却する方法に比べても0.4℃低くなる(データ略)。
  3. 地温は冷却が始まると急速に低下し、8月の明け方には無冷却よりも約11℃、また、ハウス全体を冷却する 方法に比べても約7℃低い13℃程度となる。冷却停止後でも、蓄積された冷熱により無冷却より 低く推移する(図2)。
  4. クラウン部の温度変化は、地温より急速ではあるが似た推移を示す(図3)。
  5. 6月から10月までの1a当たり消費電力量は、6,100kWh程度であり、ハウス全体を冷却する場合の 70%程度に抑えられる。
  6. 夜間に局所冷却して「サマールビー」の夏秋栽培をすると、変形果と不受精果が減少し、1a当たり収量、 商品果収量、商品果率、商品果1果重が向上する。ハウス全体を冷却する場合と比べても収量と 商品果収量が増加する(表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本方法は、マルチがけをする高設栽培に適した方法である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 四季成り性イチゴの安定生産技術の確立
予算区分 県単
研究期間 2007〜2009年度
研究担当者 中原範子、佐々木静江、各務裕史

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