[成果情報名]

大和マナ品種群を形態的特性に基づいて他のツケナと区別することはできない

[要約] 奈良県在来のツケナである大和マナ(Brassica rapa L. Oleifera Group)の品種・系統は 形態的特性と開花時期が多様であり、生育特性と種皮型からは、他のツケナと区別することはできない。
[キーワード] ツケナ、在来種、大和マナ、種皮型、Oleifera Group
[担当] 奈良農総セ・研究開発部・生産技術担当・野菜栽培チーム
[連絡先] 電話0744-22-6201
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
 大和マナは奈良県在来のツケナであり、市販品種の他に複数の自家採種系統が存在している。いずれも 集団採種によって維持されており、採油用のナタネが起源とされるが、これを明確に裏付ける文献は 見当たらない。また、福井県と大阪府の自家採種系統、沖縄県の自生種および京都府と兵庫県で栽培される 市販品種が大和マナと形態的に類似することが確認されている。これまでの調査では、大和マナが品種群 としてOleifera Groupに属する他のツケナとどのように区別されるのかは明らかにされていないため、 大和マナ6品種・系統を含むツケナ15品種・系統(表1)について形態的特性と開花時期を比較する。
[成果の内容・特徴]
  1. 大和マナ6品種・系統は、いずれも翼葉を有するが、葉縁の鋸歯、葉身表面の毛じを始めとする多くの 地上部形質について、品種・系統間で有意な差を認める(表2)。
  2. 根部の肥大は、大和マナでは「奈良農総セ系統」においてのみ、他のツケナでは「黒河マナ」、 「白茎畑菜」および「高山真菜」においてそれぞれ認められる。
  3. 大和マナ6品種・系統は、敦賀市、京都府、兵庫県および大阪府で栽培されるツケナと比較して、 開花開始期が長期に及ぶ(データ略)。
  4. 大和マナ6品種・系統は全て、吸水時の表皮細胞が水泡状のA型種子と皮膜状のB型種子を有し、 A型種子の割合は7〜94%と品種・系統によって大きく異なる(表3)。
  5. 形態的特性の調査結果に基づくクラスター分析では、大和マナの6品種・系統は同一のクラスターに 分類されない(図1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. Sハプロタイプに基づく調査(浅尾ら、2009)では大和マナ品種群を他のツケナと区別できた ことから、本成果と合わせ、大和マナは、「白茎畑菜」などの他の幾つかのツケナと同様の形態的特性を 選抜指標としながらも遺伝子交流は行わずに維持されていることが示唆された。他のアブラナ科野菜に これらの調査方法を適用することで、在来品種の来歴の解明が期待される。
  2. 大和マナ、敦賀市の黒河マナおよび大阪府の高山真菜の元来の呼称は「マナ(まな・真菜)」であり、 近年に地域名が冠された。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 古都奈良の新世紀植物機能活用技術の開発
予算区分 JST奈良県地域結集型研究開発プログラム
研究期間 2007〜2008年度
研究担当者 西本登志、北條雅也、浅尾浩史、米田祥二、後藤公美、堀川大輔、黒住徹
発表論文等 西本ら(2009)近畿中国四国農業研究、14:53-58

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