[成果情報名]

ホエーのみをタンパク質源とする黒毛和種子牛用代用乳の開発と免疫機能の賦活

[要約] 黒毛和種子牛にホエーのみをタンパク質源とする代用乳(CP26%)を給与することで、既存の脱脂乳代用乳と 同程度の発育成績が得られ、糞中IgA濃度および血中IgG濃度が上昇する。
[キーワード] ホエー、黒毛和種子牛、人工ほ乳
[担当] 大阪農総研・環境研究部・資源循環グループ、滋賀畜技セ、京都農技セ・畜産セ、京都大、中部飼料株式会社
[連絡先] 電話072-958-6551
[区分] 近畿中国四国農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 黒毛和種子牛生産において母牛の繁殖機能を早期回復させ経営効率を改善するために、子牛の人工ほ乳に 関する研究が進められているが、農家では下痢などによる子牛の損耗が多い。また、近年の脱脂粉乳価格の 高騰により、従来の脱脂粉乳主体の代用乳が高コストとなっているため、新たな原料による代用乳の開発と その給与技術の確立が求められている。本研究では、ホエーを主原料とする新たな代用乳を開発し、黒毛和 種子牛への給与試験によって、発育や糞便・血液性状および免疫機能に与える影響を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 粗タンパク質濃度(CP)が26%と従来の脱脂粉乳主体の代用乳(対照区)と同程度のホエー代用乳 (CP26区)を黒毛和種子牛に給与する場合、子牛の体重および一日あたり増体量(DG)に差はなく、 良好な発育が得られる。一方、CP22%のホエー代用乳給与区(CP22区)においては体重およびDGは他の 2区より低い傾向が認められる(図1)。
  2. ほ乳期間中の代用乳およびスタータの摂取量については、区間に差が認められない。
  3. 糞スコア(1:固形便、2:軟便、3:水様便)および糞中水分含量についても、区間に差がみられない。
  4. 糞中IgA濃度は14および42日齢においてCP26区が対照区より高く、ホエー代用乳によるIgA産生促進の 可能性が考えられる(表1)。
  5. ホエー代用乳給与区の糞便は独特の粘性と質感を持ち、対照区の糞便とは明らかに異なる性状を呈する。
  6. ホエー代用乳給与区の14および42日齢における血清中の総コレステロール(T-CHO)値と尿素窒素(BUN) 値は対照区より低い値となる。一方、14および42日齢における中性脂肪(TG)値はCP22区が対照区 よりも高く、42日齢における遊離脂肪酸(NEFA)値はCP26区が対照区より高い値を示す(表2)。
  7. 血清中IgG濃度は、14および42日齢においてホエー代用乳給与区が対照区より高く推移する(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. ホエー代用乳を給与することによって、糞中のIgAや血中のIgGなどの免疫物質濃度が上昇することから、 子牛の免疫機能の賦活化が期待できる。
  2. ホエー代用乳給与区において血中のT-CHO濃度が低下するが、ホエー摂取による血中T-CHO濃度の低下は マウスなどで確認されており、この現象はホエーが持つ機能として留意すべき点である。
  3. ホエー代用乳を給与した子牛の糞便の独特の粘性と質感は、下痢や軟便とは異なるが、ユーザーに違和感を 抱かせると考えられるため、商品化に向けて改善すべき点である。
  4. 今回用いたホエーはWPC34、WPC80および乾燥ホエーであるが、ロットにより成分量に差異があるため、 代用乳の調製には注意が必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 ホエー代用乳を用いた近畿産ブランド和牛のほ乳期発育改善
予算区分 実用技術開発事業
研究期間 2007〜2009年度
研究担当者 笠井浩司、安松谷恵子(大阪農総研)、川本友香(滋賀畜技セ)、山中健吾(滋賀畜技セ)、万所幸喜 (京都農技セ・畜産セ)、久米新一(京都大農)、中部飼料株式会社

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