[成果情報名]

発酵海藻の微量添加がブロイラーの生産性に与える効果について

[要約] 乳酸菌により保存性と利用性を向上させた発酵海藻を肉用鶏に微量給与することで、発育には影響せず 脂質代謝を改善させる可能性が示された。
[キーワード] 発酵海藻、肉用鶏、トリグリセリド
[担当] 岡山総畜セ・環境家畜部・中小家畜科
[連絡先] 電話0867-27-3321
[区分] 近畿中国四国農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 近年、肉用鶏は育種改良、飼料設計技術の向上により発育が向上するとともに、腹腔内に蓄積する脂肪量が 増え廃棄されていることが課題となっている。脂肪の過剰な蓄積は生産性を低下させる要因であり、代謝疾病を 誘発することも懸念されている。一方、水産分野において未利用のまま投棄されている海藻類や食品副資源に ついて、乳酸菌により発酵処理し保存性と利用性を向上させる技術が開発された。そこで、ミネラル分や 機能性成分を多く含むこれら発酵素材の畜産分野への利用性を検討するため、肉用鶏の飼料に微量添加し、 発育や産肉など生産性への効果および生体の代謝におよぼす影響について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 色落ちノリ、ワカメを乳酸発酵処理し、乾燥・粉末化した素材を市販の肉用鶏用飼料に1%添加し、 ブロイラー雌(チャンキー)に4週齢から7週齢までの3週間不断給餌した。7週齢において採血・と鳥し 産肉性、血中成分を分析した。試験は2度実施し、1度目は各区20羽/8.1m2、2度目は各区12羽/1.3m2とした。
    試験区:ワカメ、発酵ワカメ、色落ちノリ、発酵色落ちノリ、対照区
  2. 対照区と比較して、1度目の試験では、発酵ワカメ・発酵色落ちノリの添加により生体重が有意に向上し、 これに伴いムネ・モモ・ササミの正肉三品重量も増加する。腹腔内脂肪量や飼料要求率には海藻の添加に よる差はみられない。2度目の試験では、発酵海藻でみられた生体重の向上はみられないが、 発酵ワカメ・色落ちノリの添加により腹腔内脂肪量の有意な減少が観察される。2度の試験で生体重が 大きく変化しているのは、使用面積による(表1)。
  3. 肉質への効果は、海藻の添加によりムネ肉の剪断力価が低下し、肉が軟らかくなる傾向がうかがえる。 また、発酵ワカメの添加では加熱時の保水性には影響がないものの、生肉を急速遠心した場合の保水性が 向上する傾向がみられる(表2)。
  4. 生体の代謝への影響は、ワカメや発酵ワカメの添加により血中グルコース濃度やトリグリセリド濃度、 コレステロール濃度が低下する傾向がみられる。一方で、色落ちノリや発酵色落ちノリでは効果が一定 していない。また、免疫賦活機能の指標としたIgA濃度についても、有意な差の傾向は みられない(表3)。
  5. 2度実施した試験において、素材の微量添加で有意差に再現性が認められたのは、発酵ワカメ添加による 血中トリグリセリド濃度の低下のみである。しかし、同時に発酵ワカメの飼料添加はグルコース濃度や コレステロール濃度も抑制する傾向がみられる。このため、生体への脂肪蓄積に関連すると考えられる 血中脂質レベルに作用した発酵ワカメは、腹腔内脂肪量の減少も示すことから(2度目の試験)、 肉用鶏における生産性向上の一助になる可能性がある。
[成果の活用面・留意点]
  1. 肉用鶏の生産において発育に影響を与えず代謝を改善させ健康的な飼養が可能となる。
  2. 発酵海藻の乾燥・粉末化処理において作業面やコストの検討が必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 発酵海藻バイオマスの畜産用飼料価値の検討
予算区分 受託
研究期間 2007〜2009年度
研究担当者 金谷健史、森尚之、疇地勅和

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