[成果情報名]

酪農排水処理過程から発生するメタン・亜酸化窒素・アンモニアの抑制技術

[要約] 酪農排水の浄化処理過程での、メタン・亜酸化窒素・アンモニアの発生量は汚水中の窒素と有機物から 推定できる。また、BOD容積負荷を低く設定することにより、これらのガスの発生を抑制できる。
[キーワード] 酪農排水、メタン、亜酸化窒素、アンモニア
[担当] 岡山総畜セ・環境家畜部・環境衛生科
[連絡先] 電話0867-27-3321
[区分] 近畿中国四国農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 近年、地球温暖化は世界的に問題となっており、メタン、亜酸化窒素をはじめとする温室効果ガス 排出量削減のための取り組みが求められている。そこで、尿汚水に雑排水が混ざる酪農排水の浄化処理過程に おけるメタンと亜酸化窒素および臭気ガスであるアンモニア発生を把握するとともに、その発生抑制方法の検討を 行う。
[成果の内容・特徴]
  1. 曝気槽24m3と沈殿槽からなる連続式活性汚泥処理施設をビニールハウスで覆い (容積約32.2m3)、ハウス内からブロアを用いて一定風量で換気(242m3/h)を 行って発生するメタン、亜酸化窒素等をIPDマルチガスモニタにより数分間隔で連続的に測定する(図1)。 投入汚水はふん尿分離後の牛尿と雑排水で、BOD容積負荷が0.25、0.30、0.50kg/m3/dと なるよう段階的に変えて(表1)浄化処理を行い、発生したメタン、 亜酸化窒素及びアンモニアを、投入汚水中の窒素、有機物を基準に排出量を推定するとともに、BOD容積 負荷の差による発生抑制効果を検討する。
  2. BOD容積負荷が0.25kg/m3/dでは、アンモニア濃度は最大1.0ppmと低く推移する。亜酸化窒素は 最大34.6ppmで、大気レベルの約114倍、メタンについては最大27.5ppmで、大気レベルの 約15倍排出される(図2)。
  3. BOD容積負荷が0.50kg/m3/dと高くなると浄化処理が悪化するため、アンモニア態窒素が、 硝酸・亜硝酸態窒素へ硝化されなくなりアンモニア濃度が増加し亜酸化窒素は低下する。また、メタンは 増加し最大106ppmで、大気レベルの約60倍排出する(図2)。
  4. 酪農排水中の窒素(TN)と有機物(VS)を測定することにより浄化処理過程で発生するメタン・亜酸化窒素・ アンモニアの総排出量が推定できる。また、亜酸化窒素の排出は汚水のBODと窒素の比に関係し、 BOD 0.50kg/m3/d(BOD/N=7.9)では0.3gN2O-N/kgTNと低く、 BOD 0.25kg/m3/d(BOD/N=3.5)では21.5N2O-N/kgTNと高い排出係数となる(表2)。
  5. BOD容積負荷を低くすれば、浄化処理の悪化を起こすことなく、ほとんどのガスで発生抑制が可能である (表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 一般的に用いられるBOD容積負荷より低く設定することにより、ほとんどのガスで抑制が可能である。
  2. 本試験では、曝気槽のみではなく最終沈殿槽も含めて調査したため、最終沈殿槽から発生するメタン・ 亜酸化窒素を測定している可能性がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 家畜ふん尿の酪農排水浄化に関する温室効果ガス発生量の評価
予算区分 受託
研究期間 2007~2009年度
研究担当者 白石誠、水木剛、梯洋介、疇地勅和、長田隆(畜産草地研)

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