ヘアリーベッチのアレロパシーによる雑草の制御技術
[要約]
マメ科の
緑肥作物
である
ヘアリーベッチ
を秋播(
10
月〜
11
月上旬)すると、春〜初夏に繁茂し、ほぼ完全な
雑草制御
が可能である。寒天培地を用いた
根からの浸出物
検定法によって、この作用には
アレロパシー
が関与している。
四国農業試験場・生産環境部・土壌管理研究室 [連絡先]0877-62-0800 [部会名]生産環境(土壌肥料) [専門]肥料・雑草 [対象]− [分類]普及
[背景・ねらい]
環境調和型農業の観点から、除草剤・化学肥料の節約が望まれている。一方、中山間地においては、耕作放棄地の増加、農業従事者の高齢化から、簡便で効果が高く安価な雑草防除および土壌管理技術が求められている。そこで、近代農業以前には重要な施肥手段であった緑肥をアレロパシーの観点から再評価し、環境に調和した雑草制御に活用する。
[成果の内容・特徴]
緑肥作物のアレロパシー活性を、
Plant Box
法(農業環境成果情報,
8
,
p.31
)により検索すると、ヘアリーベッチ、コモンベッチ、ライムギ、エンバクの活性が高く、レンゲ、オーチャードグラス、ラジノクローバ、イタリアンライグラスの活性が低い(
表1
)。
これらの緑肥作物の圃場での雑草抑制効果を調べると、春播き緑肥の場合は強いものでも約
60
〜
80
%程度の阻害であるが、秋播きのヘアリーベッチ、エンバク、ライムギ、オオムギには
90
%以上のきわめて強い雑草抑制作用がある(
表2
、
3
)。
ヘアリーベッチは夏期に自然に枯れてしきわら状になり、その後の夏雑草の発生も抑制する。しかし栽培後の上壌には植物生育阻害物質は検出されず、後作に害作用はない。
ヘアリーベッチの播種時期と雑草抑制の関係を調べた結果、
10
月〜
11
月上旬までに播種すると、雑草抑制効果が高い(
図1
)。
ヘアリーベッチを他のムギ類と混植して、雑草抑制能を調べた結果、混植はバイオマスを増やす効果はあるが、雑草抑制の目的にはヘアリーベッチの単播で十分である。
レンゲとヘアリーベッチを比較すると、圃場での繁茂量がほぼ同程度であるのに、ヘアリーベッチの雑草抑制能が高いこと(
表3
)、
Plant Box
法でアレロパシーを検定すると、ヘアリーベッチの活性は高いが、レンゲは活性が小さいこと(
表1
)から、ヘアリーベッチによる雑草抑制にはアレロパシーの寄与が高いと考えられる。
具体的な方法:
10
月〜
11
月上旬に、
10
アールあたり
3
〜
4kg
のヘアリーベッチを散播する。施肥は不要。軽い覆土が望ましい。降雨後発芽する。
[成果の活用面・留意点]
活用面:冬作緑肥。果樹園・休耕地・耕作放棄田の雑草管理。敷藁の代用。自給飼料。
留意点:湿田では生育が劣る。播極時期が遅れると雑車抑制効果が低下する。雑草が多い場合は播種前に機械で除草するか、除草剤で枯らしておく必要がある。
[その他]
研究課題名:土壌生態系中におけるアレロパシー物質の動態と植物の生育制御
予算区分:経常、大型別枠(生態秩序)
研究期間:平成
5
年度(平成
4
〜
5
年)
研究担当者:藤井義晴、小野信一
発表論文等:(
1
)緑肥作物による雑草抑制作用,−寒天培地混植法による有望種の検索と圃場試験による検証−、日本土壌肥料学会議演要旨集,
39
巻,
1993
(
2
)アレロパシー活性の高い緑肥作物を利用した雑草防除,−実用性の高い植物種の検索とへアリーベッチ等有望植物の圃場試験−、雑草研究,
38
巻(別),
144
,
1993
目次へ戻る