人工飼料による捕食性天敵ハリクチブトカメムシの飼育

[要約]
ハリクチブトカメムシは、2齢幼虫から成虫に至るまで、パラフィルムで封じた人工飼料で飼育できる。捕食性カメムシ用に開発された2種類の人工飼料を比較するとPodisus用飼料は、Geocoris用飼料よりも生育が優れ、ハスモンヨトウ冷凍幼虫を餌とした場合とほぼ同等の発育と羽化率を示す。
四国農業試験場・生産環境部・虫害研究室

[連絡先]0877-62-0800

[部会名]生産環境

[専門]作物虫害

[対象]野菜類

[分類]研究

[背景・ねらい]
ハリクチブトカメムシ Eocanthecona furcellata は捕食性であるクチプトカメムシ亜科に属し、ハスモンヨトウなど鱗翅目害虫の幼虫などの天敵である。害虫防除へこの虫の利用を図るうえで増殖法の開発が重要であり、餌幼虫を飼育することを要しない人工飼料を得る必要があった。
そこで既知の2種類の人工飼料、すなわちオオメカメムシの1Geocoris用飼料(Co-hen1985)およびクチブトカメムシの1Podisus用の飼料(De ClercqDegheele1992)のハリクチブトカメムシヘの適合性を調査するとともにハスモンヨトウ冷凍幼虫を餌とした場合の結果と比較検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 飼料の調製:人工飼料(表1)は生の素材を磨砕してペースト状にしたものを厚さ0.1mmのパラフィルムMに40mg前後ずつ乗せ、上面は同フィルムを面積比で約9倍に引き伸ばしたもので封じて一塊ずつの飼料片を作製する。飼料はペースト状のままで小分け密封して、あるいは飼料片のままで凍結保存(−30℃)することができる。
  2. 飼育:摂食を開始する2齢幼虫から羽化までは径9cm×1cm高のシャーレで個体飼育する。成虫は濾紙への産卵面を維持するため高さを7cm程度とした容器で飼育する。飼料は十分量(飼料片を23齢幼虫には12枚、45齢幼虫には23枚、成虫には34枚)与えて、毎日更新する。虫の吸水のため水を含ませた脱脂綿を容器の隅に置く。
  3. 生育:Podisus用飼料によるハリクチブトカメムシの飼育は、Geocoris用飼料に比較すると、羽化までに要する日数は短く、羽化までの生存率は高く、羽化時の成虫体重は重く、羽化成虫の産卵数は多く、良好な発育を示す。ハスモンヨトウ冷凍幼虫を餌とした場合に比較し、羽化時の成虫体重はやや少なく、産卵・孵化率でやや劣るとはいえ、羽化までの生存率には差がなく、ほぼ同等に飼育できる。(図1表2
[成果の活用面・留意点]
  1. 餌昆虫の代替餌として使用できる。
  2. 今後の大量増殖を目的とした飼育に寄与する。

  [その他]
研究課題名:クチブトカメムシの生態ならびに増殖法に関する研究
予算区分:経常
研究期間:平成5年度(平成25年)
研究担当者:小林秀治、岡田忠虎、大泰司誠
発表論文等:一部発表 小林秀治(1998)人工飼料によるハリクチブトカメムシの飼育 日本応用動物昆虫学会第37回大会講演要旨集P.83

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