びわ新品種‘田茂’の特性

[要約]
びわ新品種‘田茂’は香川県小豆郡土庄町において発見された‘茂木’の自然交雑実生であると考えられ、‘田中’と同時期に収穫が可能で、‘田中’と比較して、リンゴ酸濃度が低く、糖酸比が高いため、食味が良好であることから、高付加価値品種として県内の普及が期待される。
   香川県農業試験場府中分場 栽培担当
    [連絡先]0877-48-0731
    [部会名]果樹
    [専門]育種
    [対象]果樹類
    [分類]普及

[背景・ねらい]

びわは香川県内において広く栽培され、その栽培面積は、平成6年には144haと全国第5位を占めている。県内においては、普通種の‘茂木’と晩生種の‘田中’が主要品種として栽培されているが、‘田中’は、大果ではあるものの、糖度が低く、リンゴ酸の減酸が遅いため、果実品質は中程度であり、他産地における栽培面積も多い。そこで、‘田中’に代わる、県内の気象条件に適した、食味良好な品種の開発が望まれていた。

[成果の内容・特徴]

本品種は、香川県小豆郡土庄町の谷川富保氏の園において、‘茂木’の自然交雑種子から得られた実生のなかから、晩熟の果実が着生する変異樹を発見し、苗木を育成したものである。昭和63年から現地において試作を行い、平成元年の初結実以降、香川県内の関係機関により特性の調査を行ってきたもので、平成7年8月17日付で種苗登録された品種である。
この品種の特性は以下のとおりである。

  1. ‘田茂’は、葉身の形が細長で、葉の大きさが大きいこと、花穂の形が三角であることで、‘茂木’、‘田中’と区別性が認められる(表1)。
  2. 果実は、横断面の形がやや角であり、果梗部の形がくさび型を示すが、縦断面の形、果肉硬度、可食時期等は‘茂木’に類似している(表2)。
  3. 果実の障害は、そばかす症が軽度に認められるが、紫斑症、緑斑症の発生は認められない(表2)。
  4. 開花期間は、‘茂木’と‘田中’のほぼ中間を示すが、収穫期は‘田中’と同時期である(表3)。
  5. 果実品質は、リンゴ酸濃度が少ないため食味は良好である(表4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 香川県内のびわ栽培地帯には普及可能であるが、他の地域に導入する場合には、適応性を検討する必要がある。
  2. ‘田中’と比較してリンゴ酸の減酸が早いので、適期収穫に留意する。
  3. 摘果が不十分な場合には、‘田中’より小果となるので、摘果は確実に行う。
  4. ‘田中’と比較して果肉が柔らかいため、収穫調整は丁寧に行う。

 [その他]
 
研究課題名:果樹新品種環境適応性開発試験
予算区分:県単
研究期間:平成7年度(平成5〜9年)
研究担当者:森未文徳、大谷衛、豊嶋貴司
発表論文等:なし
 
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