傾斜地果樹園用の小型浅耕機

[要約]
傾斜地果樹園における草生管理の軽労省力化を目的に開発した小型浅耕機は、表面に小突起を備えた駆動輪を高速回転させることによって、表層土壌を攪拌する小型管理機である。果樹の根を傷めずに雑草を根から除去するとともに、肥料・堆肥等と表層土壌との混和にも使用できるのが特徴である。
四国農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
[連絡先]0877-62-0800
[部会名]傾斜地農業・作業技術
[専門]機械
[対象]果樹類
[分類]普及

[背景・ねらい]

樹冠下の中耕除草は、春草の除去効果だけでなく、表層土壌の乾燥促進、施肥効果の向上など高品質果実生産にも寄与する。しかし、樹冠下は作業空間が狭く、特に傾斜地果樹園では既存の作業機では適応性が低いため、中耕作業は最近ではほとんど行われていない。そこで、傾斜地果樹園における草生管理の軽労省力化を実現するため、樹冠下への適応性が高い小型浅耕機の開発を行う。

[成果の内容・特徴]
  1. 開発した小型浅耕機は、小型のエンジンでV字形の小突起が表面にある駆動輪を高速回転させ、土壌表面を攪拌する管理機である。機体質量が12kgと軽量であり、全長が1100㎜と小型であるため、作業空間の狭い樹冠下でも中耕・除草作業かできる。また、突起部の表面積が小さく、機体の質量を突起部に集中的に作用させることができるので、駆動輪が回転し始めた際にその突起部が土中に入り込みやすい。しかも、突起部が土中に入り込むと駆動輪の周面が接地するので耕深が1~3㎝と浅い。このため、果樹の根を傷めることなく雑草の根を除去することができる。さらに、樹冠下に散布した肥料・堆肥の土壌混和にも使用できる特徴がある(図1)。
  2. 小型浅耕機による中耕除草作業は、除草くわによる人力作業と比べて作業時間が約50%に短縮するとともに、作業時の心拍数も減少し、労働負担も軽減される(図2)。また、雑草を根から除去できるので、抑草期間が長い(表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 小型浅耕機は、草丈20cm以下で特に除草効果が大きく、春肥散布後の中耕除草に適している。
  2. 傾斜地形では直進性を確保するため、上下方向に作業するのが適している。
  3. 浅耕後の降雨による土壌流亡の防止対策として、必要に応じて被覆植物を植栽する。

 [その他]
 
研究課題名:園地整備に伴う園地管理・保全技術の開発
予算区分:地域総合
研究期間:平成8年度(平成7~9年)
研究担当者:宮崎昌宏、高辻登二、山本博(四国農試)、中田昭、上山久之((株)ニッカリ)
発表論文等:特許申請(小型管理作業機)
 
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