反収900kg以上の多収米が安定収穫可能となる小型汎用コンバイン用の多収米収穫キット

要約

開発した多収米収穫キット(多収米用揺動選別部品と多収米用穀粒搬送部品)を小型汎用コンバインの標準部品と交換することにより、粗玄米収量900~1,000kg/10aの多収米を主食用米と同程度の精度と作業速度で安定して収穫することが可能となる。

  • キーワード:小型汎用コンバイン、多収米、安定収穫
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸輪作体系グループ
  • 代表連絡先:電話025-523-4131
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

粗玄米収量900~1,000kg/10aの多収米に対して自脱コンバインでは刈取部や搬送部での詰まりが生じることから収穫は困難とされてきた。一方、汎用コンバインは任意の高さで作物を刈り取り、チェーンコンベヤで作物全量を脱穀部へ搬送し脱穀する構造のため刈高さを高くすることで脱穀部に流入するワラ量を減少させて収穫負荷を低減させることが可能であり、農研機構で開発された小型汎用コンバインでは刈高さ30cmで高刈り収穫しても脱穀損失を増加させることは無い。しかし、多収米収穫はこぎ胴受け網から流下する籾屑の物量が多いため、標準の揺動選別部ではチャフシーブのフィンの間でワラ屑がブリッジした状態になり、チャフシーブ上を閉塞し選別損失が増加する。また、穀粒流量も多いため、作業速度が速くなると穀粒搬送部に詰まりが生じ収穫が困難とされてきた。
そこで、本研究では小型汎用コンバインにて多収米収穫に適した揺動選別部と穀粒搬送部の開発を行い、標準部品と交換することで反収900~1,000kgの多収米でも主食用米と同程度の作業精度、作業速度で安定的な収穫を可能とする。

成果の内容・特徴

  • 多収米収穫キットは多収米や屑発生量が多い品種へ対応した揺動選別部品と、搬送能力が高い穀粒搬送部品(1番・2番オーガ、1番・2番エレベータスプロケット、タンク張込みオーガ)から構成される。これらを小型汎用コンバインの標準部品と交換することで多収米の安定収穫が可能となる(図1)。
  • 多収米収穫キットの内、多収米用揺動選別部品に交換することで小型汎用コンバインは粗玄米収量900~1,000kg/10aの多収米を刈高さ30cmの高刈りにて作業速度1.0m/sで脱穀選別損失3%以下、夾雑物割合1%以下の精度で収穫可能である(図2)。これは主食用米収穫時と同等の作業精度と作業速度である。
  • 多収米収穫キットの内、多収米用穀粒搬送部品に交換した小型汎用コンバインは粗玄米収量900kg/10aの多収米に対し、1.0~1.2m/sの速度でも搬送部の詰まりは生じない。多収米収穫キットを装備すれば、1.0~1.2m/sでの安定した収穫作業が可能であり、10aあたりの収穫に要する作業時間は20分程度である(表1)。
  • 多収米収穫キットに交換した小型汎用コンバインは大麦、主食用米、大豆の収穫にも適応する(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:水稲生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国、100台
  • その他:三菱マヒンドラ農機株式会社より小型汎用コンバインVCH750のオプション「稲高収量キット」として販売中。

具体的データ

図1 多収米収穫キット交換部とその特徴,図2 多収米収穫キット装備の小型汎用コンバインの作業精度試験結果(左:作業速度と脱穀選別損失の関係、右:作業速度と夾雑物割合の関係),表1 北陸193号収穫の作業能率試験結果,表2 大麦、主食用米、大豆収穫の作業精度試験結果

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(26補正「革新的緊急展開」)
  • 研究期間:2015~2017年度
  • 研究担当者:加藤仁、嶋津光辰、梅田直円、山本亮、関正裕、大野智史、福田禎彦(三菱マヒンドラ農機株式会社)、木村敦(三菱マヒンドラ農機株式会社)
  • 発表論文等:加藤ら(2019)農作業研究、54(1):33-38