もち性大麦「はねうまもち」の後期重点施肥による多収栽培技術

要約

「はねうまもち」はもち性のため硝子質粒が発生しにくい。「はねうまもち」は越冬後追肥と止葉抽出期追肥の追肥量を増やした後期重点施肥により、硝子率を基準値以下に保ちながら10~18%増収する。

  • キーワード:もち性大麦、はねうまもち、硝子率、後期重点施肥、多肥栽培
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸作物栽培グループ
  • 代表連絡先:電話 025-526-3237
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

経営所得安定対策における品質評価基準では、六条大麦の硝子率の基準値は40%以下と定められている。大麦の硝子率は子実タンパク質含有率と正の相関が知られており、子実タンパク質含有率は止葉抽出期以降の窒素追肥によって高まる。そのため、うるち性品種では追肥量を抑制した栽培方法が採用されている。もち性大麦は硝子質粒が発生しにくいという特徴があるため、多肥栽培を行うことで増収と品質の維持の両立が期待される。また、温暖地の麦類栽培では基肥の割合を減らし、追肥の割合を増やした後期重点施肥が多収栽培技術として注目されている。そこで本研究では、もち性大麦品種「はねうまもち」を用いて生育後期の施肥量を増やすことで後期重点施肥を行い、収量と硝子率への影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 所内試験にて基肥重点の施肥と後期重点の施肥を比較したところ、後期重点施肥にすることで28~30%増収し、もち性大麦「はねうまもち」は原品種のうるち性大麦「ファイバースノウ」よりも硝子率が低い(図1)。
  • 現地ほ場において、標準的な栽培方法に比べて越冬後追肥と止葉抽出期追肥の施肥量を倍量にした後期重点施肥による多肥栽培(表1)を行った。越冬後追肥は、大麦の小穂分化後期から穎花分化前期に相当する。
  • 多肥栽培により、収量は標肥栽培に比べて10~18%増加する(表2)。多肥栽培による増収は、穂数と1穂整粒数の増加に起因する。穂数の増加は有効茎歩合が高いこと、1穂粒数の増加は穂の下部不稔率が低下したことに起因する。
  • 多肥栽培によって硝子率は増加するが、基準値である40%を大幅に下回る(図2)。精麦時間や精麦白度は施肥による差は認められない。

普及のための参考情報

  • 普及対象:はねうまもち生産者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:はねうまもち普及予定面積1500ha、2020年産作付面積950ha(うち新潟県約75ha)。
  • その他:多肥栽培では稈長が伸びやすく、条件によっては倒伏する恐れがあるため越冬後追肥の時期と量に注意する。
    新潟県新潟市、長岡市の生産者ほ場で得られた成果であり、他地域では追肥の時期や量の調整が必要である。
    新潟県の「はねうまもち栽培暦(暫定版)」において本技術が採用され、止葉抽出期の窒素追肥量は奨励品種であるうるち性のミノリムギの1~2kg/10aから3~5kg/10aに増量された。

具体的データ

表1 施肥時期と窒素施肥量 (g m-2),表2 各区の収量及び収量構成要素,図1 子実タンパク質含有率と硝子率の関係,図2 各区の硝子率

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2019年度
  • 研究担当者:島﨑由美、関昌子
  • 発表論文等: