飼養条件および加工処理の違いは牛乳の官能評価特性に影響する

要約

牛乳の一般消費者による官能評価特性は、加工処理(殺菌温度とホモジナイズの有無)および飼養条件(放牧の有無)により類型化できる。ホモジナイズ処理は放牧下で生産した牛乳の一般消費者による嗜好性を改善する効果が期待される。

  • キーワード:牛乳、放牧飼養、官能評価、殺菌条件、ホモジナイズ
  • 担当:北海道農業研究センター・酪農研究領域・大規模家畜管理グループ
  • 代表連絡先:電話011-857-9212
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、消費者ニーズの多様化に従い、牛乳においてもこれまでの一元的な生産体系から、放牧など飼養条件を限定した集乳体系を構築し、生産者のこだわりを直接消費者に届ける特徴的な牛乳・乳製品が販売されるようになってきている。これらの牛乳を安定的に製品供給し、かつ消費者に好まれるためには、その食味について検討する必要がある。本研究では、乳牛の飼養条件および原料乳の殺菌加工処理の違いが、一般消費者の感じる牛乳の官能評価特性(食味特性および嗜好性)に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 放牧飼養A、B、C農場と非放牧飼養D農場(表1)由来の生乳に3種類の加工処理(殺菌温度およびホモジナイズの有無)を行った牛乳を供試して、一般消費者〈延べ154名〉に嗜好型官能評価試験(表2)を実施すると、6項目の因子分析により、第一因子(F1:加工処理、寄与率35.85%)と、第二因子(F2:飼養条件、寄与率21.27%)により類型化できる(図1左)。
  • 総合評価(牛乳の好み)に基づくベクトルモデルによるプリファレンスマップから、3回の官能評価における牛乳の好みは、季節(6月または10月)により分かれること、UHT-ホモジナイズおよびHTST-ホモジナイズが好まれることがわかる(図1右)。
  • プリファレンスマップから、放牧飼養A-C農場産乳を原料とした場合、ホモジナイズ処理をすることで、より好まれる可能性がある(図1右内の矢印)。
  • 偏最小2乗回帰(PLS)分析により、消費者による牛乳の嗜好性を判定する上で重要となる食味特性項目は、香りの良悪、甘味、後味、コクである(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 放牧等自給飼料を活用する酪農家や乳業会社による特徴ある飲用乳製造技術に応用できる。
  • 本成績は、各回、年齢層、男女比を同数とした56名の一般消費者を対象に、12種類の牛乳のサンプル提示順序(3種類×4回)をラテン方格法によって配置した官能評価試験を3回実施した結果である。

具体的データ

表1 原料乳生産酪農家の飼養条件;表2 牛乳の官能評価試験概要;図1 官能評価による牛乳の因子分析(左)および総合評価(好み)によるプリファレンスマップ(右);図2 牛乳の好みをPLS回帰分析により予測した官能評価6項目の重要度;

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2010~2017年度
  • 研究担当者:朝隈貞樹、上田靖子、三谷朋弘(北大FSC)、内田健治(よつ葉乳業)、片野直哉(よつ葉乳業)、川村周三(北大農)
  • 発表論文等:朝隈ら(2017)ミルクサイエンス、67(1):22-29